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感動ポルノについて「ええ、知ってます」――『24時間テレビ』生みの親にネットでの批判について聞いてみた

『24時間テレビ』生みの親・都築忠彦氏インタビュー #2

2019/11/24
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バラエティー路線は「素晴らしいこと」

――一般にはあまり知られていませんが、都築さんが番組を降り、ダウンタウンが司会を務めた92年に、『24時間テレビ』は“バラエティー路線”に大きく方針転換していますよね。今や名物となったマラソンが始まったのも、この改革がきっかけでした。生みの親としては、この改革はどう見ていたんでしょう。

都築 素晴らしいことだと思いますよ。今、『24時間テレビ』って、みんなグーグー寝ているような時間も含めて、通して平均18%、19%とっているでしょう。ゴールデンの番組でも、10%あるかないか、という時代に。一種の怪物ですよね。

 

「今の『24時間テレビ』はバラエティー色が強すぎる」という声もあると聞きますが、視聴率があるということは、それだけの社会的なインパクトがあるということですから。そこの基盤を失ってしまってはいけないと思うんです。

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“感動スイッチ”の、何が悪いの?

――これは、バラエティー路線と無関係ではないと思うのですが、近年は『24時間テレビ』が「感動ポルノ」と批判されることも増えています。

都築 銭儲けのために、障害者を見世物にして、視聴者が見そうな話や、シーンをわざと選んでいる、という話でしょう? でも、「これ儲かるんとちゃうか」といって企画を考えるプロデューサーなんていませんよ。伝える意義があると思うのが出発点ですよ。

 そもそも、マイノリティが努力して障害を克服する姿を、子どもたちが見て感動することを僕は“感動スイッチ”と呼んでいます。感動スイッチによって、世の中が動き、差別撤廃のきっかけになることもあります。

 

――なるほど……。しかし、現在は障害は個人が持つ属性であり、それを乗り越えるのは個人の責務とする「医療モデル」から、社会が障害者にとっての障害(障壁)を作っており、その障害を取り除く責務は社会の側にあるという「社会モデル」 が主流になってきています。

『24時間テレビ』を批判する人たちは、頑張っている障害者たちは素晴らしいとしても、そういう障害者の姿ばかりを放送することによって、障害は個人の努力で克服していくべきものという「医療モデル」的な見方を強化してしまうのではないか、と懸念しているのでは?

都築 それは、おっしゃるとおりですね。ただ、医療モデルから社会モデルに変換したのも、割と最近のことじゃないかと思います。表現にも、段階があるんじゃないか。