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三浦春馬、上白石萌音も……なぜ日本の美術館音声ガイドは独自の進化をとげたのか

業界最大手に聞いてみた

2019/12/06
note

「言われてみれば、そうかもしれません(笑)。出品リスト(編集部注:出品される作品のリストのこと)も早くは決まらないし、決まった後も、『やっぱりこの作品、借りてこられなかった!』ということもあります。 

どの作品に音声ガイドをつけるかも、お客様の動線に関わってくるので、会場の図面が上がってくるまで決めることができません。ガイドをつけたいと思っていた作品が同じ部屋に4つも5つも固まってしまったときは、泣く泣く別の作品に変更することも」 

「刀剣乱舞」コラボが声優起用の起爆剤に

 俳優や女優にナレーションを依頼するのは、彼ら彼女たちの「声の技術」への期待とともに、ふだん美術展とは縁遠い層にアピールする狙いもある。 

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「美術館・博物館はもともとシニア層にはよく足を運んでいただいており、これからは若い世代にどう馴染んでもらうかが課題。俳優さんや女優さんに架け橋となってもらえたらとの思いはあります。 

 最近では、声優さんを起用させていただくことも増えています。ふだん美術展にあまり接点のない、新しい客層を呼び寄せてくれますし、声優のファンの方ってモチベーションがとても高いんです」 

 音声ガイドへの声優の起用のトレンドも、アコースティガイド・ジャパンが手掛けた展覧会が起爆剤となった。 

「2015年に京都国立博物館で行われた『特集陳列 刀剣を楽しむ─名物刀を中心に─』でゲーム『刀剣乱舞』とのコラボレーションを企画させていただき、大きな反響がありました。試行錯誤したのは、(『刀剣乱舞』の)ニーズのあるところにはきちんと届くようにしつつ、『刀剣乱舞』を知らないお客様には鑑賞の邪魔にならないよう配慮すること。 

 博物館の中でキャラクターを出すのは難しかったので、キャラクターは音声ガイド機の画面でだけ見られるようにしたり、ツイッターでは告知するけれど、オフィシャルのチラシには載せなかったり。それでもファンの方はキャッチしてくださって、大成功だったんですよ」