河野太郎・自民党行革推進本部長 ©文藝春秋

 頂点の事務次官から末端の人事課職員まで関与して、組織的に天下りを斡旋していた文部科学省。2月に発表された文科省調査の中間報告で新たに17件もの違法案件が明らかとなった。問題はさらに拡大しそうな様相だ。

 そうした天下り斡旋問題より大規模に、文科省が自らに都合良く大学を利用している実態が明らかになった。それが、文科省から国立大学への「現役出向」だ。

 この問題を指摘するのは、長年公務員制度改革や行政改革に携わってきた河野太郎・自民党行革推進本部長。河野氏によれば、2017年1月1日現在、驚くべきことに241名もの現役文科省職員が、北海道から沖縄までの計83大学に出向している。その数は、文科省職員の1割以上にあたる。

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 さらに問題なのは、出向先の大学で就いているポストだ。理事や副学長、事務方のトップである事務局長といった、大学運営の中枢を担う役職ばかり。文科省から“派遣”された職員が主要ポストを牛耳っている国立大学は、もはや「文科省の植民地」(河野氏)なのだ。

「現役出向」した後、一日だけ文科省に復帰して退職し、出向先の大学に戻って天下りしたケースも明らかになっている。現役出向が天下りの温床にもなっているのだ。

辞任した前川喜平前文科事務次官 ©共同通信社

 そもそも国立大学は、2004年に「国立大学法人」に衣替えし、文科省からは独立した存在のはずだ。なぜ独立したはずの国立大学が、わざわざ文科省からの出向を受け入れるのか。

 河野氏の回答は、ずばり「お金」。文科省が配分する、年間1兆円を超える大学への「運営費交付金」の存在が、大学における文科省官僚の価値を高めている。さらに、大学間で競わせる競争的資金の導入が近年加速するにしたがって、「補助金を配分する評価基準」を知る文科省職員は重宝がられているという。

東大には10人も出向 ©共同通信社

 実際、複数の国立大学教授が河野氏にこう呟いたという。

「文科省から来ている人が大学にいると、情報が早いから補助金を取りやすい」

『文藝春秋』4月号では、文科省から国立大学への現役出向者241名の大学名と役職名のリストを掲載している。