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source : 週刊文春 2012年1月19日号

genre : エンタメ, 読書

ファンからの思わぬ手紙に勇気づけられて

 そんな時、予備校の模試で見知らぬ女性から手紙を渡されたんです。読んでみると、彼女が高校生のとき、私がアナウンサー時代に書いた本に励まされた、と書かれていました。その本(『私がアナウンサー』文春文庫)は1998年9月、生中継中に、ビルの5階から転落。胸椎、腰椎、肋骨など六カ所を骨折。肺に挫傷を負った入院生活やリハビリを綴ったものです。

 家に戻り、久しぶりに自分の本を手にしたところ、気がついたら本棚の前で泣いていました。忘れていたいろんな情景が浮かんできて。思えば、命を落としても不思議はない事故でした。あの時は歩けるだけで幸せだった、あんなに嬉しかった。いま勉強が辛いなんて悩んでいたら、あの頃、頑張っていた自分に申し訳ない――そう思えたのです。

 今回、アナウンサーをやめて弁護士になるまでを綴った『私が弁護士になるまで』(文藝春秋刊)を書いたのも、本を書くということがこんなにも力になることをその時実感したからです。

2010年、2度目の司法試験に合格。昨年9月、司法修習生としてフジテレビで著作権やコンプライアンスを学ぶ研修を行う。3年9カ月ぶりの“復帰”だった。

 会社に戻るのは正直怖くもありました。「なんで戻ってきたの」みたいに思われるんじゃないかと不安で。すると、元同僚なんだからと突っ込んだ話をしてくれたり、親身にお話ししてくれる先輩ばかりで、私は本当にこの会社が大好きなんだ、と改めて思いました。アナウンス室に挨拶に行くと、当然ですが、知らない後輩が大勢いる。アナウンサー時代の仲間と代わる代わるお昼を食べ、毎日が同窓会みたいでした。

 1月からは弁護士として、企業法務がメインの事務所に勤めています。知的財産権、倒産、マスコミ関連など幅広く手がけることになります。フジテレビも顧問先のひとつで、私が担当することになりました。海外案件の渉外事件も多いので、いずれは海外留学にも行くことになるでしょう。

 テレビに戻るのでは、としばしば聞かれますが、今は全く考えていません。1度はやっていたことですから、今でもスタジオで話せと言われればできると思いますが、まずは弁護士として1人前になるのが先。

 ただ模擬裁判などで感じたのは、証人の話したいことをうまく引き出すことなど、法廷での仕事って意外とアナウンサーに通じるところもあるんです。これまでの全ての経験は無駄ではなかった。そう思えるよう頑張ります。

私が弁護士になるまで (文春文庫)

菊間 千乃(著)

文藝春秋
2015年1月5日 発売

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