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「大学デビュー」の季節 不安な大学1年生に親がかけるべき言葉とは?

『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(トミヤマユキコ 著)

 文春オンラインをご覧のみなさま、はじめまして。トミヤマと申します。ライターをやるかたわら、大学教員をやっています。この4月から早稲田大学の「助教」になるんですが「助教授ですか」ってよく訊かれます。助教授ほど偉くはないんだ。助手よりちょっとだけ偉い、それが助教なんだ。

 教員のわたしにとって、4月と言えばやはり新学期です。新入生がキャンパスに溢れ、サークル勧誘をもくろむ先輩たちがそれに群がる。賑やかでゴチャゴチャしているのが4月の大学です。しかし、そんなお祭り騒ぎとは裏腹に、新入生たちの心は「新しい環境でうまくやっていけるんだろうか」という不安でいっぱい。

 わたし自身は転勤族の娘だったこともあり、新しい環境にいきなりぶち込まれるのに慣れていたので、進学に際して「死ぬほど不安!」とは思いませんでしたが、ずっと同じ土地に育ち、大学で初めて東京に出て来た人なんかは、ほんとうに心細そうです。いくら表面上は浮かれていたとしても。

心の大学デビューの方は、どうなってますか?

 で、みなさんは「大学デビュー」のこと、どう思ってますか? 急にチャラチャラして、色目使って、バカなのか、そう思っていますか。まあ、ぶっちゃけ見た目を飾り立てることにあまり意味はありません(キッパリ)。みんな2年生になる頃にはオシャレなんてしなくなるし(わたしの先輩で、パジャマの上からコート着て来たひといましたけど、あれはすごかったな)。しかし大学デビューという形で「新しい環境に馴染んでやるぞ」あるいは「今までとは違う自分に生まれ変わってやるぞ」と意気込むこと自体は悪くないと思います。

 ただ、問題は「心の大学デビューの方は、どうなってますか?」ってことなんですよね。オシャレとか、モテテクとかは、それこそググれば掃いて捨てるほど出てきます。でも、もし自分が引っ込み思案で、知らない人に話しかけるのが苦手だったら、どうすればいいのか……わたしの見る限り、ネットの言説はそうした大学生の悩みを丁寧に拾ってはくれません。また、書籍を見てみても、大学4年間で何をすべきか書いたものはたくさんあるのに、もっとも不安な1年生の生活について詳しく書かれた本はないんですよ……なので今回『大学1年生の歩き方』という本を作ってみたんですよ……。

 勢い余って自著を宣伝してしまいましたが、こういうことをすると「あざとい」とか言われて買ってもらえないので(泣)、とりあえずここだけ押さえておいて欲しいという、一番重要なことをお伝えしておきます。

入学を祝われすぎると抑圧に

 それは「頼りになる大人の存在」が大学1年生のメンタルをけっこう左右するということ。わたしもそうした大人のひとりとして「コミュ障でもなんとかなる、心配すんな」と言うようにしていますが、大学って高校までの担任制度みたいなものがある大学とない大学があって、教員任せにするのはけっこう危ないと思うので(目が行き届かない)、本当はご両親を筆頭に、身近な大人たちに声がけをしてもらえると、すごく助かるんですね。

「そんなの学生を子ども扱いし過ぎだよ」なんて思わないでください。「明るいキャンパスライフ」を信じて疑わない家族に「友だちひとりもいねえ」と言えず、心で泣いてる学生って思いのほか多いんですよ。親の期待を背負おうとするいい子ほど、その傾向が強いです。入学を祝う気持ちが重すぎると、ある種の抑圧になる(最悪の場合、退学まで一直線です)。そのことを心の片隅にとめておいてくださればと思います。

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しんどそうな学生にかける言葉

 ちなみにわたしの場合、「授業は楽しい? まあ、楽しくなくてもいいんだけどね」というように「どっちでもいいんだよ(=上から目線で判断する気はないから安心して)」という喋り方を心がけています。そしてすでにかなりしんどそうな学生には、「あなたのような人、けっこういるから我慢しなくていいよ」と伝えるようにしています。すると「ああ、これは自分個人の責任じゃないんだ、誰にでも起こりうることなんだ」と思って、心を開いてくれることが多い。自責の念から解放されたことで、辛い胸の内を話してくれるようになるというわけです。どうしても身近な人に弱みを見せられない学生に対しては、プロのカウンセラーに見て貰うことも視野に入れておくといいでしょう。赤の他人の方が話しやすい、ということもあるので。(最近の大学は学内にカウンセリングセンターを置いているところもあります)。まかり間違っても「お前の心が弱いのがいけない!そんな子に育てた覚えはない」みたいな言い方はしないでください(これマジで最悪!ほんとやめて欲しい!)。家族からの叱責ほど、学生を追い詰めるものはありません。

 大学は遊ぶところじゃなくて勉強するところですし、オフィシャルに告知された情報をまめにチェックすることさえ怠らなければ、大学デビューに失敗しようが、友だちがいなかろうが、卒業することができます。この「最悪どうにかなる」の気持ちがあるかないかで、心の余裕が全然違います。でも、新入生はたいてい視野狭窄なので、そんなことは想像もつかない。

 めっちゃ浮かれてるように見えて、心は不安でガチガチ。そのガチガチをそれとなくゆるめるのが、大人たちの役目です。実は学生時代友だちいなかったとか、留年したとかいうエピソードをお持ちの親御さんは、今すぐそれを話してあげてください。あなたのちょっとした失敗談が、いま苦しんでいる学生を癒す可能性があります。それで彼らの不安感や視野狭窄がどうにかなるなら、親としての威厳なんて、どうでもいいじゃないですか。

大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ

トミヤマユキコ(著), 清田隆之(著), 死後くん(イラスト)

左右社
2017年3月27日 発売

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