文春オンライン

「教育委員会は、大ウソつき」埼玉県川口市で高1生徒がいじめを苦に自殺――2019 BEST5

3度の自殺未遂。SOSのメッセージは伝わらなかった

2020/01/04
note

「これ以上、どう頑張ればいいんですか?」

 辰乃輔さんは2016年4月、中学校に入学すると同時にサッカー部に入った。初心者だったために、同級生や先輩から「下手くそ!」「ちゃんと取れよ!」と言われたり、いじめのターゲットにされていく。悪口を言われたり、仲間はずれにされ、学校に行き渋るようになる。

 母親は顧問の教師に、辰乃輔さんがされているいじめを伝えた。顧問は「知りませんでした、気をつけます。すみません」と答えた。しかし、その後もいじめは続いた。

 担任にも相談した。クラスメイトの加害者に対してストレートな物言いで指導をしたが、その後は、担任が見えないところでのいじめが始まった。この点も母親は担任に伝えた。

ADVERTISEMENT

亡くなった小松田辰乃輔さん(15) ©文藝春秋

 この頃、自由ノートで担任がやりとりをしていた。いじめのことを知ってか、担任は「がんばれ、がんばれ」と書いていたが、辰乃輔さんは「これ以上、どう頑張ればいいんですか?」と反発していた。

 夏休みの宿題としての作文「人権について」にはこう書いている。

〈ぼくは、小5、6、今もいじめられて、かげで悪口やなかまはづれをされています。ぼくの存在って、存在なんてなくなればいいと思います〉(ママ)

〈ぼくはこれからどうしたらいいのか分からない。ぼくは消えたい〉

 夏休み明けの9月、何度か担任に手紙を書いた。

〈ぼくは、サッカー部の友達からいじめられている。(具体的な名前をあげ)2年の先ぱいたちに仲間はずれにされたり、むしされたり、かげ口を聞こえるようにする。...(中略)...先生に話をするとすぐにあいてに言う。ってまた見えないところでいじめられる。だからJ先生に話したりするのが怖い〉(2016年9月1日)

 さらに手紙を出し続ける。

〈ぼくはこれからどうしたらいいのか分からない。ぼくは消えたい。ぼくの事を死ねばいいと、消えてほしいと思ってる...(略)...ぼくは消えるから。母さん、じいちゃん、ばあちゃん。こんなぼくでごめん。もうぜったいゆるさない。...〉(2016年9月11日)

※写真はイメージ ©iStock.com

 1週間後の9月19日、自室で首吊り自殺を試みる。意識不明になっているのを家族が発見する。学校にも連絡した。校長が自宅を訪ねてきた。母親は「SOSに気がつかなかったのですか?」と聞いた。校長は「あれ(手紙)がSOSですか?」と言ったという。散々出していた手紙は、校長には響かなかった。

 10月になっても担任には手紙を送った。

〈学校は、いじめがないって言ってるけど、いじめられていたぼくはなんだろう。きょうとう先生からもれんらくない。だれも先生は、こない、ぼくは、学校でじゃまで早くてん校してほしいだと思う〉(10月19日)