Q 周りでこんな用語が流行っています
現在大学生です。周りで“アスペ”という用語が流行っています。何か目立つことをしたり、人と違ったことをすると"お前まじアスペ"と言われます。精神医学の用語がこのように使われることについて、どのようにお考えになりますか。(20代・女性・大学生)
A 日常会話で気軽に医学用語的なものを使うべきではないと思います
これは、はっきり言って複雑な気持ちです。「アスペ」という言葉は、発達障害の一群の診断名である「アスペルガー症候群」から端を発したものだと思いますが、これを
(1)「アスペ」=「アスペルガー症候群」と捉えているか、
(2)「アスペ」と「アスペルガー症候群」は違うものと捉えている
かで、まず話が変わってきます。
(1)の場合、「アスペ」を医学用語の略語として使っていることになります。だとしたら、簡単に「お前まじアスペ」とは言えないはずです。なぜなら、精神医学を専門に学んだ医師でも「アスペルガー症候群」と診断を確定するには相当な勇気が要ります。それほど難しい診断なのに、人と違っているというだけで簡単に「アスペ」と言うのは、ただの誤診です。そんな堅苦しいことを言わないで、と思われるかもしれませんが、医学用語は本来、医療を行う職人のための専門用語です。医療者が医学用語を一般的な場面で使う時は、必ず医学的根拠を示しながら使います。そうでないと伝わらないからです。なので、医療者でない方が「アスペ」を「アスペルガー症候群」の意味で使う時は、その医学的根拠を明確に示すか、使用を控えるべきだと僕は思います。これは、寿司屋でのマナーとして、職人さんが使う「おあいそ」とか「あがり」などの用語をお客は使うべきではない、というのと何となく重なります。
次に、(2)の場合です。これは、単なる略語ではなく、特定の集団内で違う意味を持って使われる、スラングの形と言えます。個人的には、このように言葉がスラング化する過程には興味がありますが、この場合も、使う方が「アスペルガー症候群とは意味が違う」と明確に認識していることが大前提になると思います。
そして何より、最も、圧倒的に大切なことは、実際に「アスペルガー症候群」と診断され、通院している方や、その周りの方々がいらっしゃるということです。その方々が、「アスペ」という言葉を聞いて、嬉しいと思うでしょうか。たとえ「お前まじアスペ」と軽い気持ちで言う相手が、通院などを要さない人であったとしても、周りで聞いたり見たりする人で間接的にショックを受ける人がいるかもしれません。それくらい繊細に考えるべきだと思います。
総括すると、僕は日常会話で気軽に医学用語的なものを使うべきではないと思うし、使うくらい興味があるなら、それについて知識を身につけてほしいと思います。そしたら「アスペルガー症候群」という言葉自体がなくなりつつあるということも知る事ができるでしょう。
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