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シューズで見る箱根駅伝 青学大の選手たちがアディダスからナイキに履きかえた驚き

シューズで見る箱根駅伝 青学大の選手たちがアディダスからナイキに履きかえた驚き

2020/01/06
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そこまで速く走れない僕も「ヴェイパーフライ ネクスト%」を履く理由

 さて、なぜここまでヴェイパーフライが独占をしたのでしょう。もちろんタイムが出る、故障をしないというのも理由のひとつでしょう。けれども、僕は「走ることが楽しくなるシューズ」だから、というのも理由にあると思うのです。

 実は僕もナイキの「ヴェイパーフライ ネクスト%」に加え、ほぼ同じ履き心地の「ズームフライ3」2足を買いました。なぜならこの靴を履くと、気持ちよく走れるから。例えば前日飲みすぎた翌朝は足が重い。今日は走りたくないなと思う日もある。だけど、この靴を履いて、試しに1歩踏み出すとカーボンプレートの反発で足がポーンと出る。いつもなら10kmで終えていたけれど15km走ってみようとか、1km6分くらいのペースでゆっくり走っていたはずが、ついつい気持ちよくなって、1km5分を切るペースで走れちゃう。「今日は走りたくないなあ」という朝も、あのシューズなら走ってもいいかなという気持ちになれる。1歩を踏み出す決心を後押ししてくれるんです。

 ヴェイパーフライやズームフライといったナイキのカーボンプレートシューズは、ランナーの生活を変えるイノベーションだと思っています。ちょっと走ることに飽きてきた人も、箱根駅伝を目指す選手のように、毎日、走り続けなければならない人にとっても、「爽快に気持ちよく走る」という経験はたまらないものです。音楽を聴きながら走ることだって、iPodがなければ実現しなかった。革新的なイノベーションは、技術ではなく人の行動や気持ちを変えるものなのです。

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東洋大、6区今西駿介選手から7区蝦夷森章太へ“左右色違いヴェイパー”のタスキリレー ©文藝春秋

 ヴェイパーフライを履くと足が弱くなるという人もいますが、そんなことはない。爽快感のある走りがあれば、毎日練習を積むことだって苦痛ではなくなるのです。これまでノルマをこなすように練習をしていたとしても、この靴なら前向きに走ることができる。その喜びはエリートランナーでも市民ランナーでも同じだと僕は思うのです。市民ランナーとして走りつづけてきて、ちょっとタイムも頭打ちになってきたな。そういう市民ランナーはぜひ、このシューズに足をいれてみるといい。これまでちょっと忘れていた「走る楽しさ」を思い出させてくれるはずです。そうして、こう思うでしょう。「また、記録狙ってみようかな」と。

青学大、6区谷野航平選手から7区中村友哉へ、楽しそうなタスキリレー ©文藝春秋

 いつも明るく楽しそうな雰囲気の青学大の選手たちが、長く楽しく走れる靴を履いて箱根を制した。それが今年の箱根のシューズを象徴していると思っています。