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東芝・原発事業崩壊の蔭に前会長の「イメルダ夫人」の存在

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 東芝は4月11日、監査法人の承認を受けない「結論不表明」のまま、2016年10~12月期の「決算」を発表した。いよいよ上場廃止も現実味を帯びてきた。

 2015年に「不正会計」が発覚して以降、会社経営に損害を与えたとして、西田厚聰、佐々木則夫、田中久雄の3社長と最高財務責任者(CFO)2人は東芝から損害賠償請求をされている。ところが、巨額損失が発生している原発事業に関しては、責任の一端を担うべき人間は他にもいる。

 その一人が、2016年6月から今年2月まで東芝の会長に就いていた志賀重範氏だ。

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東芝前会長・志賀重範氏。 ©文藝春秋

 志賀氏は、原発事業に詳しい専門家として、2006年に東芝が買収した米国ウェスチングハウス(WH)のピッツバーグ本社に送り込まれた。

 しかし、6600億円をかけて買収したWHは、「会議が始まると、まず『米国発の商用原発を作った我が社は』から始まり、自慢話が滔々と続く。プライドの塊のような人たちでした」(東芝関係者)という。業務改善をしようにも、志賀氏はじめ東芝出身の幹部たちはWHを御すことはできず、どちらが親会社かわからない状態であった。

 そうした中、英語が得意でなかった志賀氏は、英語と日本語に堪能な秘書を募集する。採用されたFさんは、志賀氏の出張や会議にも同席して、飛行機の座席もいつも志賀氏の隣のビジネスクラス。やがてFさんは「秘書以上の存在」となり、志賀氏と結婚した。英語が堪能なFはWHの生え抜き経営陣と親密になり、WHにとって都合のいい話がFを通じて志賀に吹き込まれたという。

 Fさんは東芝社内では「WHのイメルダ夫人」と呼ばれ、浜松町にある東芝本社ビルを闊歩している姿が頻繁に目撃されていたほか、志賀氏の会長室にも出入りしていた(「文藝春秋」編集部の取材に対し、東芝は「Fの執務場所はウェスチングハウス・エレクトリック・ジャパンにあったと承知しています。会長室に常駐していたということはありません」と回答した)

 今年3月、WHは破綻した。「国策」に後押しされた原発輸出というビジネスにおいて、いかに東芝の歴代経営者は判断を誤ってきたのか。経産省はどのように関与してきたのか。そして、WHが泥沼状態になる中で、志賀前会長と「イメルダ夫人」は東芝社内でどう振る舞っていたのか。

 文春オンラインの「リアルタイム・ノンフィクション東芝崩壊」でもおなじみのジャーナリスト・大西康之氏が、「文藝春秋」6月号で詳しくレポートしている。

大損した原発建設 ©共同通信社

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