今、もっとも過酷なロケをしているのはお笑い芸人・U字工事ではないだろうか。

 肉体的にキツいロケは他にもあるかもしれない。だが、精神的に芸人魂をこれほど傷つけられるロケはなかなかない。なにしろ、南米アマゾンの部族の村にまで行っているにもかかわらず、“主役”ではないのだ。そもそもそのロケがつまらないから、他のロケに放送尺を奪われるなら仕方がない。だが、そうではない。ロケの主役が「ナスD」と呼ばれるディレクターになってしまっているのだ。芸人よりもスタッフが目立っている。

 たとえばこの男、出された物は何でも食べてしまう。実際、現地の人に気に入られるためには、現地の物を食べることが近道というのはよく言われること。だが、この男は度を越している。現地の人が「これはまだ食べられない」と言う、部族でも食べない物まで食ってしまい、現地の人を引かせてしまうのだ。

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 そんな何でも食う男は、現地の人に勧められると何でもやってしまう。「美白にいい」と言われたウィトという果実を喜々として全身に塗ってしまったのだ。勧めた人もそれを最初は笑って見ていたが、次第に引いてしまう。そして、1時間ほど経つと塗った部分がゾンビのように青黒くなってしまったのだ。さらに時間が経つと真っ黒に。実はウィトは入れ墨をする際にインクなどとして使うもの。つまり全身真っ黒の入れ墨を施してしまったのだ。現地の人の冗談を真に受け、取り返しの付かないことに。もうそこからは一挙手一投足が面白くてたまらない。現地の人から逆にムービーまで撮られてしまう始末だ。それでも、「テレ朝をクビにならないか」などと焦る一方で「これで一生生きていくとしても、僕はこれを背負って行こうと思います」「第二の人生のスタートです」と、いたってポジティブなのもスゴい。

体温や感情によっても顔の色が変化する“ナスD”こと友寄隆英ディレクター

 アマゾンのさらに奥地に行こうと船に乗ろうとするが、ナスのように黒紫色の顔だ。当然怪しまれる。パスポートを見せれば、「顔が違うじゃないか!」と。事態は深刻なのに、そのバカバカしさにもう笑うしかない。ようやく乗った船でも、その暑さや1時間以上遅れの出港などに辟易としてテンションが下がるU字工事を尻目に、ナスDは「絶対楽しいに決まってる!」と喜々とし笑っている。何でも食う男は、U字工事も、他のロケ企画も、そのバカポジティブな言動で番組丸ごと食ってしまった。

▼『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』
テレビ朝日 火 23:15~24:15