メイプル超合金のカズレーザーはテレビ界に久々にあらわれた“凄玉”だ。
スラッとした長身で、全身真っ赤な服に金髪という一回見たら忘れられない風貌。その上でバイセクシャルを公言している。だからといって、いわゆる「オネエ」枠でもなければ、キャラ芸人のような扱いでもない。どんな大物と絡んでも物怖じせず、醒めた視線で自然体。そのクールさは、実力はあるけれど、個性がないと言われる若手芸人の中にあって突出した異物感を醸し出している。
そんな中、彼が普段見せないようなキラッキラの笑顔を見せたのが『モシモノふたり』だ。これは2人の芸能人が「おためし同居生活」を行うというもの。カズレーザーの相手は「地球上で一番好き」という京本政樹。真っ赤なタートルネックという“勝負服”でやってきたカズレーザーは、全身真っ黒の出で立ちであらわれた京本政樹に、まるで恋する乙女のような目になっていた。京本が同じ芸人のヒロシと仲がいいと知ると嫉妬を必死に押し殺した表情をしてしまうのがまた可愛らしい。全身真っ黒と真っ赤な長身の中性的な男性が並んで歩く光景はどこか現実離れしている。思えば、テレビの醍醐味は“普通ではない見たことのないもの”を見ることだ。
カズレーザーも、京本政樹の魅力を「ずっと手が届かない位置にいる」ことだと語っている。いま、美男美女のタレントはたくさんいるが、その多くが「人間味」や「親しみやすさ」を演出している。だが、人が本当の意味で憧れを抱きカリスマ性を感じるのは京本のようにいい意味で浮世離れしている人に対してだ。カズレーザーもまた、今では数少ないその系譜に立つ者だ。
カズレーザーは、各所で「『女子力が高い』なんて女性はもともとない。ウソの概念」「その人のことを想い浮かべてポジティブな気持ちになるならそれはもう恋」といった“名言”を連発している。そんな彼の言葉を共演者が聞きたがる雰囲気は、どこか再ブレイク前夜の有吉弘行を思わせる。求められているのが「毒舌」ではなく「肯定感」あふれる言葉であるのが今っぽい。昨今、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』や私小説『夫のちんぽが入らない』などがヒットしている。これらはこれまで当たり前とされていた価値観を「呪い」と捉え、多様な生き方を肯定することで呪いを解く物語だ。カズレーザーは存在そのものがそれを体現しているようだ。
▼『モシモノふたり』
フジテレビ 水 22:00~22:54