ここまで賛否が分かれるドラマも珍しい。杉咲花が主演の『冬のなんかさ、春のなんかね』の評価を巡って視聴者の意見は真っぷたつに割れた。

 評価というより好き嫌いかな。SNSではドラマ自体と、杉咲が演じる古着屋のバイトをしながら小説を書く土田文菜(つちだあやな)への否定的な反応が目につく。

 監督と脚本に今泉力哉の名がある。今泉作品ならではの恋愛ドラマを期待していた層が(あれ、これ違うじゃん。こんなの観たくない)と反撥している感想を幾つも目にした。

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 おれは、一話から観るうちに、そもそもコレは恋愛ドラマなのかとも思った。普通なら一組のカップルの恋愛の始まりから結末までを描く。途中には裏切りがあり、周囲の妨害もある。二人の気持ちが離れても復縁するケースも。

杉咲花 ©文藝春秋

 ともかく恋人たちの劇的な変遷を描くのが、テレビにおける“恋愛ドラマ”の王道だろう。ところがこの『冬のなんかさ』では、杉咲が演じる文菜は、第一話の深夜のコインランドリーで、優しい美容師の佐伯ゆきお(成田凌)と出会い、その数時間後には、彼のアパートに泊まる。

 なのに続く第二話、第三話と、文菜は彼氏のゆきおがいながら、毎回違う男とホテルに入る。ベッドシーンこそ描かれないが、何なのこの女って軽すぎっていうか淫乱じゃんって観る側に嫌悪感が湧く。

 さらに文菜は性的にルーズな女でなく、他者との関係性に気を使い、性的関係を持った相手とはどう距離をとるか、お互いに負担にならない付き合いは可能か。そこで悩むタイプなのだ。重いドラマだ。

 これまでない新しい恋愛ドラマを監督は撮りたかったのだろう。台詞も並みのドラマの比でない長台詞があるかと思えば、相手の言葉に「うん……うん」とうなずき続けるシーンも。相槌を打つのも会話の重要なポイントだからね。

 ここが杉咲花の凄いところで。監督の意を汲んで、「うん」という短い相槌にも強弱やアンニュイ感でメリハリつけたり、目の表情もきめ細かく変化をつけ、彼女の心理を表現する。

 そう、杉咲花のたたずまいから目が離せないの。存在感と演技力では、あの世代では抜きんでた俳優だからね。だからさ、そんなに花ちゃん、毎回違う男とホテルに入らせないでよ。

 第六話で、かつて好きだったのに恋人になれなかった田端というミュージシャン役で松島聡が登場したが、演技力が杉咲花とは段違いで、恥ずかしい台詞をなんの陰影もなく喋べるから、脱力したよ。

 文菜が恋した男って、こんなペラい言葉を、含羞のかけらも浮かべずに口に出来る奴なんだあって脱力したんです。今泉さん、杉咲花のこと大事に使ってね。

『冬のなんかさ、春のなんかね』
日本テレビ系 水 22:00~
https://www.ntv.co.jp/fuyunonankasa/

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