「あれ!? 神木さん……?」

 取材を受けた人物が驚くのは無理もない。話を聞きに来たのが、あの神木隆之介だからだ。神木が追っているのは、かつて「てるちゃん」の愛称で活躍していた子役・水島輝久の足跡。ネット上には、1982年に10歳の若さで亡くなったという情報があるが、詳細は不明だ。

 事の発端は、神木が芸能活動30周年を記念して昨年10月に開催したイベント「神木庭」。そこで上映するために、いわゆる心霊ドキュメンタリーを撮影した。神木が訪れたのは地元民から「てるちゃんハウス」と呼ばれる空き家。そこにはかつて祈祷師が住まい、悪魔祓いの儀式の果てに少年が命を落としたという“いわく”がある。不気味な屋内には、「てるちゃん」と殴り書きされた、顔の判別できない少年のポスターが貼ってある。上の階からは異質な物音が鳴り、最初はなかったはずの汚れた野球ボールが転がっている。そして、VTRを見直すと「タスケテ」の声――。

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 上映後、観客にはこれが「フェイクドキュメンタリー」であることが明かされる。神木はこのジャンルが好きで、中でも最初から「フィクション」であることを明示した、テレビ東京の大森時生らが手がける『TXQ FICTION』シリーズの大ファン。「どこからが本当なんだろう、嘘なんだろうって考えてる時から全部わかんなくなる。その時のゾッとする感じ」に魅了され、「役者として目指すべきところ」とまで言う。

神木隆之介 ©文藝春秋

 そうして自ら『TXQ FICTION』への出演を申し出るところから始まるのが、本シリーズ最新作、その名も「神木隆之介」だ。30周年イベント自体は実在するが、開催日時もタイトルも内容も異なるらしい。ならば、フェイクドキュメンタリー好きという話も、自ら出演を志願したという経緯も、どこまでが真実でどこからが虚構なのかまったくわからない。

 劇中には大森時生本人らも登場し、神木とともにどんな作品を作るかを話し合う場面まで映し出される。もちろん、その光景さえも真偽は不明。一般的にフェイクドキュメンタリーは「嘘」だとすぐにわかるため著名な役者は起用しない。本作はそれを逆手に取った、いわば“フェイクドキュメンタリーを作るフェイクドキュメンタリー”といえる。

 神木によれば、あの空き家に少年のポスターがあったのだけは事実で、そこから着想した“物語”だという。てるちゃんは「僕は大人になりません」とインタビューで語っている。その無垢で不穏な姿に、見ている僕らは天才子役時代の神木を想起せずにはいられない。まさに「神木隆之介」というタイトルが相応しい、幾重にも入り組んだ異形のフェイクドキュメンタリーだ。

『神木隆之介』
テレビ東京系 特別番組
https://www.tv-tokyo.co.jp/txqfiction_kamiki/

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