大相撲春場所は序盤戦から荒れた。人気を一身に集めた安青錦だが、勝ったり負けたりが続いて、綱取りが遠のいた。

 横綱も、大の里が初日から三連敗。豊昇龍も四日目に土がついた。初日の前日に放映のNHK BS『大相撲どすこい研』は“金星(きんぼし)”がテーマで、荒れる場所を予見したようだ。

 平幕の力士が横綱に勝つのが金星。小結など三役力士でなく、その下の前頭力士が角界の頂点を倒すサプライズが金星だ。

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『どすこい研』は、一場所で二つの金星が生まれるとデータを示す。なのに四日目ですでに四個の金星だ。

 実は先場所も金星が六。西前頭筆頭の義ノ富士は、豊昇龍、大の里を連破して二日連続の金星獲得。熱海富士(西前頭四枚目)も、九日目に豊昇龍を破って初金星。さらに翌日も大の里に勝って、あわせて五四〇万円の懸賞金を獲得したという。番組にはこの二力士が出演した。

©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 懸賞金は一本、六万円。横綱戦ともなると何本もの懸賞金が。義ノ富士は、西の方にドーンと積まれた懸賞の束が目に入り「あのとき、ヤバイッすよね」と語る。「あれ見ると、めちゃくちゃ緊張します」って、嬉しそうに、でも軽い調子で、少しズルっこい目で笑うのが面白かった。さすが現代っ子と声が飛んだ。

 義ノ富士に「数えますか?」と問われた熱海富士は「数えない、まったく」とニコニコ答えるの。義ノ富士は付け人に訊いたりして、「五十一本です」と言われるとエッ!みたいなって正直に語る。

 人の善さそうな熱海富士は「それやると、相手が五十一万にしか見えなくなるよ」と反応して好対照だ。

 平幕力士が横綱力士から金星を奪うと座布団が宙に舞い、私も興奮するけど、ガクッと肩を落とした横綱の顔を見るのって残酷な気がしてね。

 現役時、金星提供率が高かった元横綱・稀勢の里は“横綱”のプレッシャーを語る。大関なら二場所続けて負け越せば、下に陥落して済む。しかし横綱には“落ちる”という選択肢はない。引退あるのみ。金星を獲った力士も、実はその場所を負け越す例が多い。

 金星が多いのは平幕在位の長さにも比例する。三役で活躍できるほど地力はないということだ。時折、超新星級の金星を炸裂させるものの、あとは前頭上位で地味に土俵に上がる。

 データと現役を引退した力士の肉声を絶妙にミックスさせた「どすこい研」は相撲という不思議な格闘技の魅力をあぶりだす。

 私はね、角界を去った後に、プロレスなど格闘技のリングで戦った力士の特集を見たいな。力道山から輪島、天龍源一郎まで。土俵からリングに戦場を移した彼らの力が格闘技隆盛の時代を築いたからね。

『大相撲どすこい研』
NHK BS 不定期放送
https://www.web.nhk/tv/an/dosuken/pl/series-tep-G9W71XY6L3

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