結局「最後までちゃんと見た」朝ドラは『虎に翼』だけだ……。『ばけばけ』はあまりの話の進まなさに挫折した。ヘブン先生には未だに魅力を感じないし。
そんな今、『虎つば』のスピンオフドラマが放映された。『山田轟法律事務所』です。あの「男装の弁護士・山田よね」が主人公。よねさん人気あったもんね。
私はずーっと「どんなに人気があっても(人気があればあるほど)スピンオフはやめとけ」と言っている。スピンオフドラマって「脇役にも脇役の人生がある。人間はすべて素晴らしい」という思想、つまり『世界に一つだけの花』精神である。別に悪いことじゃないですが、結局はそれは「感動のインフレ」を引き起こし、感動に飽きて主役にも脇役にも何も感じない、人間がただのコマになる、という結末が来るのだ。それ以前に、スピンオフドラマって、本編より面白かったためしがない。ほぼ蛇足。作者とファンの自己満足のワチャワチャドラマ見せられるからウンザリ。
という色眼鏡バリバリで見た『山田轟法律事務所』。思っていたようなものではなかった。これは『虎に翼』のスピンオフではなく『虎に翼』の本編ではないか。
不思議なぐらい「よねという人の、今まで見えなかったドラマ」は、ない(エピソードなら出てくる)。
『山田轟法律事務所』に溢れんばかりに出てくるのは「『虎に翼』本編で、作家が書ききれなかったこと」。
在日朝鮮人、戦中から戦後に至るまで続いた「慰安婦たち」、被差別部落民、浮浪児やパンパン。そちらのほうが主役なのではないかと思った。
「人々が踏み潰されながら怒りの絶叫をする」
「その絶叫が希望を切り開くのだ」
という、ものすごい作者の思いが前面に出ていた。きっと『虎つば』本編が終わったあとの、「あれも入れたかった」「これも入れとくべきだった」というのを全部放出した感じ。そしてその「出し方」がものすごくわかりやすい。道徳の教科書を読んでるようだ。
この「わかりやすさ」が、見る人によっては「啓蒙くさい」と反発を買うところなのかなと思う。私も「被差別部落の男性が家族全員の苗字を変えたいと弁護士事務所に相談しにくる」という件には「弁護士事務所か……その前にこの人たちは文字の読み書きはできるのだろうか」というあたりが『狭山事件』などを思い出してひっかかってしまうのである。
しかし、最後まで見入ってしまうのだから、ドラマとしては感動のツボを突いた、よく出来た物語なんだろう。ラストシーン、司法試験に臨むよねさんの、ふと見せる不安……いや怯えた……?ような表情は絶品だった。あと、秋元才加は芝居がうますぎである。
『山田轟法律事務所』
NHK総合 特別番組
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2026155674SA000/



