魔法使いフリーレンと、そのパーティー一行がまた戻ってきた。「少年サンデー」連載の原作マンガがアニメ化され放映されたのは三年前の秋から半年間だったから、第二期開始をどれだけ待ちわびたか。
中世ヨーロッパ風の世界が舞台だ。都市や村々を蹂躙する魔族を、幾多の闘いで倒したフリーレンたちが「じゃあ、またね」と別れて長い時間がたった。
尖った長い耳の少女フリーレンは千年以上も生きる長命のエルフだ。十年もかけた魔王討伐の熾烈な闘いも、彼女にはつい昨日のことのようだ。勇者ヒンメルや生臭坊主ハイター、戦士アイゼンという仲間たちと五十年後に再会すると、イケメンだったヒンメルの頭はツルツルだ。
長命の魔法使い少女は、人間の命の儚さと、それゆえの尊さに気づき、ヒンメルたちのことを知るために再び旅立つ。
だから各章の始まりに、「勇者ヒンメルの死から◯年後」の文字がある。魔族との闘いを時間順に追うのでなく、若く勇敢な戦士たちの“後日譚”として描いた発想に新鮮さと、エルフと人間の時間と世界観の違いが切なく際立った。
声優陣も、この設定にぴったり。フリーレン(種﨑敦美)のクールな声は静謐だが魔族の残党が残る異世界の不穏さを伝える。と思うと、突然バカげた魔法に夢中になったり、機嫌を損ねると何日も泣き喚く。
さらには新しい仲間と組んでの魔族とのバトルシーンの演出も見せ場充分。美しく切ない魔法世界と、仲間との笑いあり、間抜けな失敗もご愛敬で、このバランスの良さが魅力だ。
それにしても、なんと美しいファンタジイだろう。半世紀前に幻想小説や映像がここまで進化すると、誰が予測しただろう。
先日、日本SF大賞の受賞が決定した『伊藤典夫評論集成』の広辞苑なみの厚さ、重さの頁を繰る。一九六六年か六七年。アメリカの大学キャンパスで、トールキン『指輪物語』シリーズと、ハインライン『異星の客』を学生が手にしていたという。
当時ファンタジイは売れなかった。北米ではSFはそこそこ売れたが、幻想小説はさっぱり。それがトールキンや『ゲド戦記』によりロングセラーに。宮﨑駿も彼らに影響を受けた。
『コナン』などヒロイックファンタジーや“剣と魔法の小説”と呼ばれるジャンルの興隆もあった。
それら先行する作品群の世界観にくわえ、長い尖った耳を持つ、地上最強の魔法を駆使するクールな声音の少女を造形したとき、この美しい異世界が出来あがった。勇者ヒンメルは死んだが、どんな寒村にもヒンメル像が立っている。私たちも勇者ヒンメルを忘れないし、フリーレンの現在の同行者にも夢中だ。
『葬送のフリーレン』
日本テレビ系 金 23:00~
https://frieren-anime.jp/



