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武田砂鉄×ジェーン・スー#1「東京育ちコンプレックスが抱く“上京”への憧れ」

『コンプレックス文化論』発売記念対談

2017/07/13
note

武田 中学生になるととりわけ顕著ですが、クラスの中に階層が生まれてきますよね。A・B・Cと、ゾーンが分かれてくる。スーさんは、自己分析すると、階層のどの辺りに所属していたと思いますか?

スー 上のほうのヒエラルキーにはいたんですよ。周りの子たちはみんなかわいかったり利発だったり。私もみんなで騒ぐことが好きだったし、学級委員をやっていたというのもあって、AかBぐらいにはいた。でも明らかに容姿ではなくて「面白枠」としての所属。キレンジャーとして入ってるなという自覚。

武田 それは自分も同じですね。A・B・Cのグループに分けた場合、生意気にもBの上くらいという感覚ではいて、Aのグループに面白い話をしにいく派遣業をしていた。共学だったので、Aグループの人は無条件でモテる。具体的には男女でとしまえんにグループデートに行く。自分はAへの派遣業に従事しているわけだから、「もしかしてとしまえんに誘ってもらえるんじゃないか」って淡い期待を持つんだけど、そこは残酷で、派遣は切られるんです(笑)。

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グループデートのメッカはやはり遊園地。©iStock.com

スー Aとは違うんだな、って自覚はありましたね。流行りの服や髪型やメイクが絶対に似合わないという自負がはっきりあったし。今でこそ「私には他のやり方がある」って分かっているけど、当時は「何をやってもダメだな」という感覚があったから。だから、大学時代にはソウルミュージック研究会というサークルに入ったり、ヒップホップが好きになったりしたんだと思うんですけど。

武田 自分は中学からヘヴィメタルが好きになったんですけど、通っていたのが郊外にある私立中学で、自分は家が近くて自転車通学なんだけど、同級生の多くは都心の家から学校に通ってくる。とにかく、聴く音楽が洗練されているんですよ。渋谷のHMVで買った小沢健二やコーネリアスを聴いている。こっちが帰りに寄るのは地元のBOOKOFFだから、渋谷のHMVと音楽格差が生まれる。でも「あいつらに合わせたくねぇ」と意地を張って、B’zを好み、遅れてきたビーイング好きを一人で突っ走る。

スー あえてのビーイング(笑)。誰にも頼まれていない「あえて」。

武田 「あえて」って、自分で言い続けていないと、需要も供給もたちまち途絶えちゃうんで。

(2)に続く


インタビュー構成 武田砂鉄

コンプレックス文化論

武田 砂鉄(著)

文藝春秋
2017年7月14日 発売

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武田砂鉄×ジェーン・スー#1「東京育ちコンプレックスが抱く“上京”への憧れ」

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