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ニュージーランド航空はなぜエコノミーに“夢の”3段ベッドを設置するのか? いくらで利用できる?

2020/03/17
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 2020年2月末、ニュージーランド航空は、機内に「3段寝台」を設置する計画を発表した。その名はエコノミー「スカイネスト」。エコノミークラスの一部スペースに「スリープ・ポッド」とよばれる寝台を設置する、画期的なサービスだ。

 エコノミークラスの客室内の「スカイネスト」は最大で6基の「スリープ・ポッド」からなる。3段式となっており、長さ200cm以上・幅58cm以上となっている。「スリープ・ポッド」ごとの高さは公表されていない。ちなみに寝台列車の「サンライズ瀬戸・出雲」のシングルは長さ196cm・幅70cm、国鉄時代の10系・20系のB寝台は幅52cmであった。

「スカイネスト」はエコノミークラスの客室内におかれ、3段寝台となる。客室のどの位置におかれるかについては公表されていない

「スリープ・ポッド」には、枕・シーツ・毛布・耳栓がそなわり、カーテンを閉めることでプライバシーが確保される。また、読書灯やUSBポートの設置も検討しているという。

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時間ごとに追加料金を払うシステム

「寝台」と書いたが、乗客はここをずっと占有できるわけではない。少なくとも離着陸時はエコノミークラスの通常の座席に座ることが求められる。そのうえで、時間ごとにくぎられた追加料金を支払うことで、「スカイネスト」が利用できる仕組みだ。もちろん利用客が変わるごとに、キャビンクルーによって寝具などの一式は交換される。

 ニュージーランド航空によれば、1人につき1セッションの予約が可能(複数人での利用や子どもの利用はできない)であり、セッションの長さは今後テストを通じて決定される。また、予約客が自分自身のセッション時間を知る方法として、IFE画面を利用してのリマインドなどを検討しているという。なお、「スカイネスト」の予約はフライト中を含むすべての販売・流通チャネルで検討されている。複数人で搭乗する場合は、1人が「スカイネスト」を利用している時間、その利用客の座席が空席となるので、その空席を使って同行者が横になれるなどのメリットも生まれそうだ。

ニュージーランド航空のエコノミー「スカイネスト」。計6名が就寝できる構造。時間制で区切られ、「スカイネスト」の権利を購入した客は自席から移動し、利用する形式となる

「寝台」はどの路線に投入されるのか?

 この「スカイネスト」、2020年10月に開設予定のオークランド~ニューヨーク(ニューアーク)(ニューヨーク発の所要時間は17時間40分)便の業績評価の後、2021年内に「スカイネスト」の本格導入の是非について最終決定を下す予定としている。

 実はニュージーランド航空には、画期的な機内サービスの前例がある。それはエコノミー「スカイカウチ」(https://www.airnewzealand.jp/economy-skycouch)とよばれるもの。エコノミークラスの1列3席が連なる一体型のシートで、座席の下にある折り畳み式のフットレストを引き出せばシートがカウチ状になり、簡易的なベッドをつくるアイディアだ。これはANAが成田~ホノルル間で就航させているA380「フライングホヌ」にもニュージーランド航空のライセンス供与という形で導入されている。

 ニュージーランド航空の航空プログラム責任者のケリー・リーブス氏によれば、「スカイネスト」の開発や、当局から必要な認可が下りるまでに乗り越えるべきハードルは、「スカイカウチ」とは比較にならないほど高いという。だが、ニュージーランド航空が3年の研究開発期間をかけた「スカイネスト」が無事認可され、採算が見込めるようなら、他の航空会社がライセンス供与により「スカイネスト」を導入する可能性もありそうだ。