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保育園「誰か一斉休園と言って」 フリーランスの私が2歳半の息子と自宅作業を覚悟するまで

「登園自粛」では保育士、親が一枚岩になれない理由

2020/04/10
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フリーランス家庭は頼まれやすい?「保育時間の短縮」

 ここで我が家の仕事の形態を説明すると、夫婦ともに、打ち合わせや取材がない限り、普段から自宅を職場としているフリーランスのライター・編集者だ。

 そのため3月に入ってからは極力出歩かぬよう、できるだけ取材や打ち合わせはオンラインで対応してもらうようにしていた。

 Web媒体の仕事が多いせいか、仕事量にもさほど変化はなく、取材ができないなりに頭を捻って企画を立てたり、資料を読みながらじっくり取り組む本の仕事に精を出したりと、感染リスクを減らしつつ仕事ができていた。

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©︎iStock.com

 そんな中、3月上旬にコロナ対策をはじめた園からすぐに「保育時間の短縮」をお願いされた。事情はわかる。子どもの学校が休校になってしまった保育士さんが出勤できなくなり、人手が足りないから協力してほしい、ということだ。

 言われた翌日から時短保育に協力したが、「自宅作業できる業種だからすぐに声をかけられたのかな」という気もした。

 自分の知る限り、周りのお父さんお母さんは学校や介護施設、児童館、病院など、現場でしかできない仕事に従事している人が多い。

 確かに、我が家は自宅で子どもを見られる職種だ。保育士さんに協力したい気持ちもある。でも、2歳半の男児が家にいては、仕事のクオリティや量を維持することは不可能だ。このあたりのことはなかなか理解してもらえていないような気がして、いつも歯がゆい思いをするのだが……。今は平時でなく有事。協力できる家庭から協力するしかない。

4月に入り「狭い部屋で完全に核家族化」するのを覚悟

 短縮保育を続ける中、「そろそろヤバいのではないか…」と感じたのは4月に入ってからだ。

 増え続ける都内の感染者数に日々不安が募り、子どもを送り出すのが怖くなってきた。夕方に迎えに行った時、息子が元気な顔で駆け寄ってくると心底ホッとし、胸をなでおろしている自分がいる。

 しかし、子どもがいたら仕事はほぼ不可能。そして1カ月も祖父母や友人に頼ることもできず、気晴らしにどこかへ行くこともできない中、狭い部屋で完全に核家族化するのには、かなりの勇気と覚悟が必要だった。

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 日々もんもんとする中、見知らぬ保育士さんの市長に宛てたこんなツイートで、やっと腹を括れた。

「どうか今一度市民のこと思って賢明な判断を 私達保育士は子どもも家族も死なせたくありません どうかこれからの●●市のことを思って保育園も休園にしてくださると安心します」

 時を同じくして園長から登園自粛のお願いがあり、1カ月の休みを申請した。