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ユニクロ×原発 潜入ジャーナリスト対談#3「奥さんに反対されませんでしたか?」

 ユニクロへの潜入取材に成功した横田増生氏は、現在52歳。福島第一原発で働いた鈴木智彦氏はひとつ下の51歳。ともに家庭をもつ身だ。身を挺する危険な取材に、家族の反対は? そして、次なる潜入ターゲットは?

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「絶対行ってくれなきゃ困る」

鈴木 横田さんがユニクロに潜入すると聞いて、奥さんはどんな反応でしたか? 潜入するために離婚し、結婚し直して、奥さんの姓にしたわけですよね。

横田 ウチの妻は不思議な人やから、「いいよ」みたいな感じ。「面白いね」と言って、離婚届の用紙を取りに行ってくれました。役所の窓口で「書き間違えるといけないから2枚くれ」と頼んだのに1枚しかくれなかった、と文句を言ってましたよ(笑)。妻の両親も「ああ、そうですか。頑張ってください」みたいな感じで応援してくれました。

ユニクロに一年潜入取材した横田氏

鈴木 面白がってくれたわけですね。

横田 やっぱり、妻の承諾がないと難しいです。「何言ってるの、あんた」とか「バカじゃないの?」みたいな感じだとね。鈴木さんは、原発行きを反対されませんでしたか。

鈴木 ウチの奥さんは、「絶対行ってくれなきゃ困る」と言ったんです。なぜかというと、“行く行く詐欺”になりそうだったから。『週刊ポスト』に「鈴木智彦は原発で働きます」というフライングの記事が出てしまって、「これだけ広まった以上、行かないとまずいでしょ」と言われました。「男が廃るでしょ」みたいな話。

横田 すごい。理解があるどころか、お尻を叩く感じ。

鈴木 仲間のフリーライターとかジャーナリストでも、家族から「原発は危ないから行っちゃ駄目」って言われた人はかなりいたようです。

横田 みんな当たり前に電気を使うようになったけど、事故のその後については知りませんからね。原発に潜入できたら『週刊文春』で書ける、という話だったんですね。

鈴木 そうですけど、『週刊ポスト』からも声がかかって、どうしてもやってほしいみたいな話になって、先に記事が出ちゃったんです。2社から取材費が出るからお金の心配はなかったですけど、俺も原発で働いている最中に記事が出て、しかも本名ですから、いつバレるかとビクビクしました。

鈴木氏が原発潜入時に使っていたカメラ(左)など

ユニクロからの給料は1年で100万強

横田 潜入取材って時間もかかるし、効率からいえば悪いですよね。僕も『週刊文春』が取材のバックアップをしてくれて、香港やカンボジアのユニクロの下請け工場に取材に行く取材費も持ってくれるというし、成果が上がれば書かせてくれるというからできたけど、1人だったらやれませんよ。形になるかどうかわからない取材に1年かけるなら、別の仕事をやったほうがいい。業界誌などの原稿もちょこちょことは書いていましたけど、ユニクロからもらった給料は、1年で100万円強ですもん。

鈴木 俺は犯罪現場の周辺を取材してるので、密漁の取材だったら暴力団と一緒に密漁する、みたいなことになりかねないんです。「金がない、金がない」と言ってたら、アワビの密漁をしているやつらに「だったら鈴木さん、日当2万円出すから、手伝ってよ」と言われました。「密漁が終わったあとホテルに戻ったら、みんなしゃべるから、聞きたいことも聞けるよ」って。

横田 日当2万ですか。

鈴木 犯罪現場周辺の取材には、普通の潜入ルポとはまた違う壁があるんです。10日取材したら20万円になって、しかも犯罪者は口が堅いから誰にもバレない。自分にきっちりした線引きをしておかないと、行っちゃうやつは行っちゃうだろうなと思います。そこは固く自分を守っておかないと。

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