ヤマト運輸を傘下に収めるヤマトホールディングスは、4月28日、「新たな労働力の確保」と「社員の処遇改善」などのため、基本運賃を140円から180円値上げすることを発表した。

記者会見で発言するヤマト運輸の長尾裕社長(右) ©共同通信

 ヤマト運輸は昨年9月、神奈川県下の平川町支店で労働基準監督署から未払いのサービス残業代に対する是正勧告を受けたのを皮切りに、同年12月には同じ支店に三六協定違反、大臣告示違反の2つの是正勧告が追加され、その過酷な勤務実態が批判されていた。ヤマト運輸は他の支店でもサービス残業が行われていたとして、全国的に調査を拡大し、巨額の未払い残業代支払いに追い込まれている。今回の発表は、積極的な労働環境改善に取り組む姿勢を打ち出した形だ。

 ヤマト運輸は、なぜ「働き方改革」を急がねばならなかったのか。

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 アマゾンとの関係はどうなるのか。

 2014年夏にヤマト運輸で1ヶ月潜入取材し、『仁義なき宅配』を上梓したジャーナリスト・横田増生氏が報じた「ヤマト運輸」の一連の記事を通して、日本の物流でいま何が起こっているのか、詳らかにする。

ユニクロだけじゃない 潜入記者が見たヤマト運輸物流崩壊

 ヤマト運輸の労働環境が急激に悪化したのは、2013年、アマゾンの荷物を運ぶようになってからだった。

 ライバルの佐川急便はアマゾンに見切りをつけたのに対し、業界シェアを重視するヤマト運輸は年間約3億個にも上る宅急便を引き受けた。アマゾンの荷物の「受け入れ」以降、何が変わったのか。

ヤマト運輸 クール宅急便の「常温配送」動画を公開する

 月刊「文藝春秋」2017年4月号で、ヤマト運輸のサービス残業とクール宅急便の常温配送を告発した2人のドライバーが、配送現場の動画を入手。

 現場の人手不足、インフラ不足が、ヤマト運輸の「看板サービス」であるクール宅急便の常温配送の常態化を招いているということを知ってもらいたいと、公開に踏み切った。

ヤマト働き方改革 問われている労組の存在意義

 3月16日、ヤマト運輸の労使交渉が妥結。一部の時間帯指定廃止など、ヤマト運輸の“働き方改革”がメディアで喧伝される一方で、現場からは「これでは負担が減らない」と絶望的な声が聞かれた。

 労使の合意項目が弥縫策になってしまった背景とは――。

残業代未払いだけじゃない ヤマト支店長がセクハラで厳重注意

 現役支店長が、女性従業員に対する不適切な言動で厳重注意を受けていた。

 支店長は既婚者だったが、30代の女性従業員に交際を迫り、支店長の地位を利用して様々な「特別待遇」を約束していた。女性従業員に送ったLINEの内容も公開する。

ヤマト当日配送見直しで、アマゾンに残された3つの選択肢

 ヤマト運輸が取り扱う年間約19億個の荷物のうち、アマゾンは3億個前後、2割近くを占める最大手の取引先である。

 しかし、利益率の低さから、ヤマト運輸はアマゾンの当日配送から撤退。今後アマゾンが取りうる3つの選択肢について、横田氏が分析する。