昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

山本 一郎
2017/08/17

現代日本を覆う「あの敗戦のようなパターン」な空気感

んで私たちの20年後はどうするんでしょうかね

 「忖度」という言葉が独り歩きした2017年でしたが、終戦記念日を迎えてこの数年ひしひしと感じていることがありまして。

小池百合子女史の「私はAI」発言という物件

 「空気を読む」ってあるじゃないですか。きっとみんなこう思ってるんだろうなあ、って先回りして、自分の意見を押し殺すやつ。そんな日本社会や組織で良くあることとして、トップが突然何故か頓珍漢なことを言い出すっていうのがあります。「あれやろう」とか「こうしよう」とか、意気込みは分かるんだけど、「ああ、これはきっと上手くいかないんだろうな」と思うようなことをやり始めるのです。それって合理的なの?  本当に実現できると思ってそう言ってるの?  誰に相談したの?  賛成とか反対とか、それなりに吟味した結果がそのトップダウン?  マジで?

 現場として疑問に思うことは多々あれど、うっかり反対意見を言って、上から睨まれると面倒くさいし未来が閉ざされるから、空気を読んで正面からは反対しない。ああ日本人。まあ、私が言ってもたぶん変わらないであろうし、誰かとつるんで「やめてくれ」と叫んでも決めた本人はダルそうにして無視するんだろうなあと思うと、余計なことはしたくない。徒労になりそうだから言わないってこと、多いじゃないですか。

 先日、東京都知事の小池百合子女史が定例記者会見で「私はAI」とか言い出して、この人本当に馬鹿なんじゃないかと思った物件がありました。本格的におかしいんじゃないの、この人。豊洲移転の決定事項が都庁内に文書で残っていなかったと石原慎太郎元都知事をあれだけ攻撃しておいて、今回都議選前に突然出てきた「豊洲市場と築地市場の併用案」に関しては小池女史が独断で決めちゃってたわけですよ。とても可燃性の高い逸品です。たぶん、舛添要一さんが実にくだらない絵画や中古車の購入でメディアの大バッシングに遭い引きずり降ろされたようなトリガーになるんじゃないかと思う内容なんですよね。

五輪旗を振る小池都知事 ©getty

レガシーはどこにいったんだよ

 豊洲市場への移転反対にしても、築地市場を閉鎖して一部を湾岸部の大動脈となる2号線にしなければオリンピックで一番の見所は築地近辺の大渋滞ということになってしまいます。世界各国からギャラリー呼んできて「動かない車の列」を鑑賞するという。普段あまりにも渋滞が酷いので築地市場の空中から環境基準を超えるベンゼンまで出てしまいました。豊洲市場の使いもしない地下水に汚染が出たとか騒いでいたのはなんだったんでしょう。

 そのまま行ったら渋滞がヤバイので対策するはずだった2号線は突貫工事でも完成しないだろうし、仮設でも2号線がなければ東京オリンピックの選手村と競技会場が直結できないという謎の五輪になる。仮設ってことは、いずれ五輪が終わったら金かけて作った仮設もぶっ壊して本来の工事をするわけです。レガシーはどこにいったんだよ。すでに決まってた豊洲市場移転に小池女史が手を突っ込んだ一年が無駄になったという話だけでなく、国立競技場もその他競技を行う会場も満足に決まってないわけです。もう開催まで3年とかしかないんですけど。千葉とか埼玉とか神奈川とか周辺の自治体の偉いおっさん達もなんか怒ってる。怒るの当たり前ですよね、どの会場をどう使うのか、東京都がどのぐらいの費用負担をするのかすら決まってないものがあるんですから。

 ああ、これはきっとうまくいかないんだろうなあ、東京オリンピック。

はてなブックマークに追加