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菅野 朋子
2017/09/01

中国が北朝鮮への石油供給をやめるかがカギ

――2000年に電撃的にオルブライト米国務長官(当時)が訪朝したようなことが起きる可能性はないのでしょうか?

「いや、米国は今、そんなに暇ではありません。ですから、私はトランプ大統領は2~3カ月以内に結論を出すと考えています。それはなぜか。トランプ大統領は、北朝鮮の核を除去するか、それがだめなら、北朝鮮の核武装を許容するほかなくなります。北朝鮮が核を保有すれば平和協定を結ぶしかない。先制攻撃は、米国の世論がそれをよしとしていない現在の状況では難しい。

 しかし、です。米国は4月の米中首脳会談後から中国に北朝鮮への制裁発動を求めてきましたが、なんの成果もありませんでした。8月には、国連安保理が北朝鮮への人、物資、資金の流れなどを規制する決議第2371号を採択しましたが、その前の8月2日にはトランプ大統領は遂に北朝鮮に対する強力なスーパー制裁法案に署名しました。これは中国からの原油と石油製品をはじめ北朝鮮の貿易まで封鎖する強力なもので、現在はこの2つの制裁が発動していますが、米国は第2ラウンドとして、台湾と米台軍事秘密会議を開いたり、武器(対レーダーミサイルや魚雷など約14億ドル相当)を販売し『1チャイナではなく2チャイナで行く』という強力なメッセージを中国に送り、さらには、通商法スーパー301条を発効させようと中国への知的財産権侵害の調査も開始して中国への圧力を強めています。

 中国が一連の圧力により北朝鮮への石油供給をストップすればいいですが、そうならなければジレンマに陥ります。おそらく、この経緯に2~3カ月かかる。その過程で、中国が制裁に応じなかったり、制裁に効果がなければ、それがメディアで報道されて米国内での世論も変化してくるでしょう。そうなると、先制攻撃への障害がとり除かれることになる。トランプ大統領はこの第2ラウンドが終わるのを待って、そこで決断するものと見られます」

決断が迫られる ©getty

トランプが先制攻撃を選択せざるを得なくなる理由

――その決断の内容とは?

「平和協定か先制攻撃ですが、平和協定は平和という言葉こそつきますが、これこそ悪の源。平和協定は北朝鮮の思惑通りにするしかなく、核を持たない韓国はそれこそ何もできない。まさしく『通米封南』(米国と通じて韓国は無視する)です。

 また、平和協定が結ばれるということは、北朝鮮と米国の敵対問題が解消されるということです。敵対問題が解消されれば、駐韓米軍は必要がない。韓米連合司令部が閉鎖される可能性が高い。これはキッシンジャー元国務長官も話していましたが、駐韓米軍も再構成されることになり、韓米同盟は弱体化することになります。

 そうなると、何が起きるか。韓国内では核を持とうという声が出てくるでしょうし、文在寅大統領がこれを否定するならば、北朝鮮側なのか韓国側なのかと詰め寄られ、責任を問われることにもなる。NPT(核拡散防止条約)体制も揺らぎ、核は日本、台湾へと拡散する可能性が高まる。さらには、米国はイランの核武装をも認めることになってしまう。そうなれば、中東の石油掌握という観点からイランをコントロールすることはできなくなります。つまり、米国は核心的利益に打撃を受けることになる。トランプ大統領は平和協定後を考えると、平和協定を結ぶ決心はできない」

米国世論は先制攻撃反対 ©getty

――そうなると、どんな展開が待っているのでしょうか。

「こう考えていくと、私は先制攻撃しかないのではないかと考えます。ただ、それほど心配する事態には陥りません。北朝鮮の対空ミサイル基地などは露出しているのですべて把握されていますから、トマホーク巡航ミサイルでものの10分で破壊できます。次に核施設を打撃する。また、現在、日本の岩国には米国のステルス戦闘機F35Bが10機配備されていますが、ステルス戦闘機で電磁パルス弾やブラックアウト爆弾を北朝鮮に投下すれば、人命被害なしに電子機器を破壊し、停電を起こして発電所を無能化できる。金正恩委員長は指揮伝達ができなくなり、軍の指揮能力を無力化できるのです」