フリーゲージトレインの新幹線車両を実現すれば、在来線軌間と新幹線軌間の両方を直通できる。つまり、博多~新鳥栖間は新幹線軌間、新鳥栖~武雄温泉間は在来線軌間、武雄温泉~長崎間は新幹線軌間へと台車を変化させて、乗り換えなしで直通可能だ。佐賀県が新幹線建設を認めなくても、在来線を使うから問題なく直通できる。
海外で実用化されているなら鉄道先進国の日本でも開発できるはずだ。フリーゲージトレインの開発に巨額の予算が投じられた。国土交通省鉄道局は気の毒なほど予算がないけれど、フリーゲージトレインについては財務省が後押ししたと言われている。実用化されれば、他の地域の新幹線計画もフリーゲージトレインを使って低価格で代替できる。鉄道予算を削減できると考えた。
救世主にならなかった「フリーゲージトレイン」
しかし、期待の星だったフリーゲージトレイン計画は頓挫する。海外の例は機関車と客車を使う方式であり、動力のある機関車は大型の台車を使える。客車側の台車は比較的簡素な仕組みだ。しかし日本の新幹線は電車方式で、小さな台車に動力と可変機構を組み込む必要があった。試験の結果、なんとか走行可能にはなったものの、台車の負荷が大きく、耐用期間の短い部品の交換やメンテナンスの頻度が多く運用コストが大きくなる。
さらに、台車の荷重が大きいため線路への負荷も大きい。JR西日本は山陽新幹線への乗り入れに難色を示し、これが決定打になった。山陽新幹線に直通できなければ長崎新幹線のメリットは小さい。フリーゲージトレインでは、博多~長崎間の所要時間は約1時間20分であり、時短効果はスーパー特急方式と大差なかった。この時点で、新大阪直通がフリーゲージトレインの最大のメリットになっていたのだ。