以前、新幹線で最も利用者の少ない駅を訪ねようということで、北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅に行った。さすがの新幹線No.1秘境駅で、駅の目の前には森が広がっているようなところであった。すごいところに新幹線の駅を作るものだなあと驚かされた次第である。
では、西日本に目を向けてみるとどうだろうか。さすがに東海道新幹線には秘境駅はなさそうであるが、もっともっと西へ走れば新幹線秘境駅はきっとあるはずだ。そうしたわけで西へ西へと探してみると、西日本で最も乗車人員の少ない新幹線駅は九州新幹線の新大牟田駅であることがわかった……。
1年で「No.1秘境駅」が逆転していた……
ここで詳しい方からはお叱りを受けるであろう。当初、筆者の手元にあった駅別乗車人員の資料は2017年度のもの。その時は新大牟田駅の1日の平均乗車人員が585人。れっきとした西日本の新幹線で最も利用者数の少ない駅であった。
ところが、取材の準備を全て終え、あらためて2018年度の資料を見てみると新大牟田駅は611人。対して、(同じく九州新幹線の)新水俣駅が576人と西日本No.1秘境駅の立場が逆転していたのである……。お恥ずかしい限りではあるが、新水俣駅は肥薩おれんじ鉄道の駅も併設されていて、こちらも合わせれば新大牟田駅の乗車人員を上回るであろう。それに新大牟田駅は新幹線の単独駅。“秘境駅”というならばこちらのほうがふさわしい……ということで進めさせていただきたいと思う。
さて、その新大牟田駅に向かった。新大牟田駅には1日に2往復だけ「さくら」が停車するほかは、すべて各駅停車の「つばめ」しか停まらない。そこで博多駅からJR九州が誇る800系「つばめ」に乗り込んで約30分。「こだま」ほどではないにせよそこそこ「つばめ」の運転本数も多いので、アクセスにはさほど不便はない。その点からしてどうやら奥津軽いまべつ駅よりは行きやすい秘境駅である。新鳥栖・久留米・筑後船小屋に続く4番目の新大牟田駅に到着した。