出張風のビジネスマンもやってくる「秘境駅」?
奥津軽いまべつ駅もそうであったが、新幹線の駅は利用者数が多かろうと少なかろうと、周辺に何はなくとも実に立派な設えである。新大牟田駅も、高架3階部分の相対式ホームは真新しくホームドアも取り付けられている。2階の踊り場を抜けて改札のある1階コンコースまで出てもこちらも改札外に大きな待合スペースもあるほどの立派さ。さらに改札口の向かいには大牟田市の観光案内所もあるくらいで、秘境駅などと呼んでいたのが申し訳なくなるほどのしっかりとしたターミナルの装いであった。もしかすると、新大牟田駅は利用者数の少なさに反してかなり賑やかな駅なのではないか……。
と思って駅の外に出てみたら、駅前の装いも実に立派なものであった。奥津軽いまべつ駅のように駅前に森が待ち構えているようなこともなく、むしろ住宅地やコンビニもあった。ロータリーも広々としていてバスの発着も客待ちのタクシーもある。筆者がやってきた新幹線からも出張風のビジネスマンのグループがタクシーに乗り込んでいったくらいだ。うーむ、奥津軽いまべつ駅を思い浮かべてやってきたから、正直ちょっと立派すぎるような……。
では、なぜ1日600人しか利用しないのか?
それもそのはずで、奥津軽いまべつ駅は津軽半島の先っちょの今別町という町にある駅なのに対して、新大牟田駅はかつて三池炭鉱の町として栄えた大牟田市にある新幹線のターミナル。三池炭鉱はとうに閉山したが、今も大牟田は三井の企業城下町として賑わっているから、いくら新幹線単独の駅であっても新大牟田駅の周囲が山に埋もれた秘境であるわけがないのである。むしろ、それだけのターミナルでありながらも1日の乗車人員が600人前後ということが不思議なほどだ。じっさい、タクシーに乗り込んでいった出張ビジネスマンが去ってからというもの、駅のあたりにはまったく人影すら見られなくなった。