今年の10月、『降りて、見て、歩いて、調べた 東海道線154駅』(イカロス出版)という本を上梓した。タイトルの通り、東京から神戸までを結んでいる東海道線(“東海道本線”というのが正しい路線名らしい)の駅ひとつひとつに降りては乗ってをくりかえし、それぞれの駅の特徴やら歴史やらをまとめたものである。「文春オンライン」で書いている“ナゾの終着駅の旅”の東海道線バージョンとでもいえばわかりやすいかもしれない。

日本で最も歴史の古い鉄道路線・東海道線
こちらは兵庫県西宮市「甲子園口駅」の駅前。野球のバットとボールをかたどったオブジェがあった

 とにかく開業以来日本随一の大動脈であり続けた東海道線。東京駅や品川駅、名古屋駅といった大ターミナルだけでなく、小規模な駅を含めても特色豊かで実に楽しい旅であった……。と、そう振り返ることができればいいのだが、実際のところは退屈なところも少なからずあった。例えば京阪神や名古屋などの大都市近接のベッドタウンの小さな駅は、通勤通学に特化されたような趣で、旅人を楽しませてくれるような空気感はほとんどないのである。そんなわけで、154駅のうちおおよそ3分の1くらいは「何を書けばいいのか」とずいぶん頭を悩ませることもあった。

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 ……とグチが先立ってしまったが、ここでは東海道線154駅の中から筆者よりすぐりの3駅を紹介しよう。テーマは“インパクトのある駅前”。駅前には大小の差はあれどたいていはクルマやバスのための広場が設けられているのが普通だが、なかには「いったいなんだこれは」と言いたくなるような駅前風景もある。というわけで、改札口を抜けて駅舎の外に出て、そこで目にする風景の“おもしろさ”“不可思議さ”に注目し、勝手にベスト3を選ばせてもらった。