第3位 「金メダルのまち」の秘密―― 共和駅
愛知県大府市にある共和駅は、ひとつお隣の南大高駅から名古屋市にはいるということもあって、まさしくベッドタウンの小駅といった風合い。駅の周りには住宅地が広がっている、なんの変哲もない大都市近郊の駅である。ところが、そんな共和駅の駅前広場には「金メダルのまち 共和」と書かれた看板と「共和の金ちゃん」なるナゾのキャラクターのモニュメントが置かれている。金メダルのまちとはいったい何なのか。最初は1964年の東京オリンピックで使われた金メダルを造った町工場でもあるのだろうかと考えた。いや、もしかしたら2020年の金メダルかもしれない。もしそうならば、大したモノではないか。
が、実際のところはまったくの思い違いであった。「金メダルのまち」の看板には、吉田沙保里や伊調馨といった名だたる金メダリストの名前がズラリ。つまるところ、この共和駅の「金メダルのまち」というのはこの町ゆかりの金メダリストがたくさんいるよ、ということなのである。共和生まれとか共和育ちではなくて“ゆかり”であることがポイントかもしれない。吉田沙保里・伊調馨やその他の女子レスリングの金メダリストたちはみな共和駅に近い至学館大学のOGたち。レスリング以外では吉田秀彦・谷本歩実の名前もあったが、彼らも共和にある柔道の名門道場・大石道場の出身者である。
オリンピックで金メダルというのはとてつもなく素晴らしいことだし、文句を言うつもりはさらさらない。むしろ柔道にレスリングと、格闘技という点では他の地域に秀でた町なのであろう。きっと来年の東京五輪でもその数を増やしてくるに違いない。近くには金メダリストの手形が展示された公園もあるし、金メダリストたちが勝利祈願で参拝したという八ツ屋神明社もある。共和が“金メダルのまち”であることには、なんら疑問を挟む余地はないのである。
ちなみに共和の名物はもうひとつ。共和夢通りという約650mの道沿いにはイチョウの木が植えられていて、葉っぱが色付く秋には路上が黄金色に染まるのだとか。やっぱり、共和は“金メダルのまち”にふさわしいのである。