「和光市」という駅は、ふだんその駅を利用する機会のない都民にとって、実にナゾに満ちた駅である。何しろ、東京メトロ有楽町線や副都心線、さらには東急東横線などに乗っていれば行き先として頻繁に登場する。駅名から察するに、きっと和光市という街のターミナルなのであろう。けれどこれが想像の限界だ。和光市という地名からどんな街なのかを思い浮かべることは難しいし、そもそもどこにあるのかも判然としない。

副都心線、有楽町線で行き先によく現れる「和光市」。どんな駅なのだろうか。

 しかも和光市を終点とする電車が盛んにやってくるものだから、心の奥底で「和光市ってどんな駅なのだろう」と疑問を膨らませつつ、日々の通勤をやり過ごすことになるのである。

新宿三丁目駅発、半分以上が「和光市」を目指す

 そんなわけで、そろそろ疑問を解消せねばならぬ。新宿三丁目駅から「和光市行き」の副都心線の電車に乗り込んだ。新宿三丁目駅から池袋方面に向かう副都心線の電車は、日中13時台を例にとると1時間に14本走っている。そのうち実に6本までが和光市駅を終点としている。さらに加えて2本、和光市駅を超えて森林公園駅を目指す急行電車。つまり、新宿三丁目駅を出る電車の半分以上が和光市駅を目指す。比較的利用者の少ない昼間でもこれだから、実に行きやすい便利な終着駅・和光市である。

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埼玉県和光市にある「和光市駅」

 急行では21分、各駅停車では31分。地下を走り続けてようやく地上にひょこっと顔を出したところで和光市駅に着く。東京都からほんの少し埼玉県側の駅である。路線上は東京メトロ有楽町線・副都心線の終点の駅で、東武東上線では成増駅と朝霞駅に挟まれた途中駅。地下鉄から東武東上線に直通する電車は、この和光市駅から乗り入れてゆく。いっぽうで、「和光市行き」の電車はここで折り返して再び地下に潜る。駅としては東武と東京メトロの共同使用駅で、東武鉄道が管理している……と説明すれば正確だろうか。

新宿三丁目駅からは急行で21分の和光市駅(こちらは北口)