和光市の「光」は栄光の「光」
戦争が終わると陸軍は解体されるが、広大な敷地は米軍が接収してキャンプ・ドレイクと呼ばれる第一騎兵師団が駐屯する基地へ。軍需工場跡地の一部にホンダの工場が開設され、キャンプ・ドレイクも日本返還後の1960年に朝霞駐屯地として生まれ変わる。さらに余剰となった基地跡地に団地群や理化学研究所などが相次いで開設されるに至り、高度経済成長期の人口急増と郊外の発展という時流にもみごとに乗っかって、大発展を成し遂げた。
駅ができたころはただの村だったところが、軍の街となって軍需産業が興り、戦後もその流れを維持しつつも都心との近さを背景に出来た官民の大型施設と団地群。自治体も村から町へ、そして市へ。町制施行時の大和町の由来は「大いなる和」、和光市の由来は大和町から1文字もらいつつ栄光の「光」と組み合わせたものだとか。なんだかキラキラ感もあって、これが和光市駅を“ナゾの駅”にしてしまっている理由なんじゃないかとも思うが、実際に東武東上線に加えて地下鉄まで乗り入れるようになったのだから、市名通りに栄光を掴んだと言ってもいいのかもしれない。
こうしたわけで、和光市駅はこれまで訪れてきた数々の終着駅とは一味違う駅であった――少し変わっていたのは、駅前の公衆トイレに「トイレ診断士の厠堂」という名前がつけられていることくらい。これはいわゆるネーミングライツで、トイレの改修や管理を無償で請け負った業者による命名権取得なのだとか。使ってみるとごく普通のトイレでした。
和光市から池袋へ行くには何がベスト?
最後に、和光市駅から都心に戻るときに頭を悩ませる問題の答えを。和光市駅から都心方面に向かう電車は、東上線の電車も地下鉄直通電車もすべて池袋を通る(東上線は池袋が終点)。ならば池袋に行くときにはどの電車に乗れば一番早いのか。
東上線にせよ地下鉄にせよ各駅停車(普通)よりもとうぜん急行の方が早く、いずれも約14分。どちらに乗っても大して変わらない。ただし、地下鉄副都心線直通と有楽町線直通では停まるホームが違う。副都心線のホームは池袋駅の中でもだいぶ地上に遠い場所にあるので注意が必要だ。各駅停車にのるならば、東上線は後発の急行に追い抜かれることが多いが、地下鉄直通は池袋までに追い抜きはナシ。和光市を訪れる機会があったら、この辺りを勘案して帰りの電車を選んでみてはいかがだろうか。
写真=鼠入昌史