その駅は、津軽半島の山の中にある。東京から新幹線に乗って3時間30分。それが近いのか遠いのか……「奥津軽いまべつ」という北海道新幹線の駅は全国津々浦々の新幹線の駅の中で最も利用者数の少ない駅である。
2016年3月に開業して間もない北海道新幹線、巷間赤字が伝えられているがそれでもやっぱり新幹線。利用者が少ないと言っても1日数百人くらいはいるのではないか……と思って調べてみたら、2016年度はなんと1日平均の乗車人員はたったの約60名だという。いやはや、驚きの少なさである。
駅で降りたのは数人のサイクリストだけだった
というわけで、その「奥津軽いまべつ」という駅はいったいどんな駅なのか。新幹線に乗って訪れてみた。東京駅6時32分発の「はやぶさ」1号新函館北斗行。それに乗って約3時間半、新青森駅の次の駅が目的の奥津軽いまべつである。その段階ですでに車内はガラガラで、北海道新幹線の現状を垣間見つつ新幹線随一の秘境駅に降り立った。筆者の他には、幾人かのサイクリストが降りただけ。津軽半島の山間に建つ駅舎は開業から3年あまりが経った今でもピカピカで、新築の香りに満ちていた。
前述の通り奥津軽いまべつ駅は、北海道新幹線の駅だ。つまり、JR北海道の駅ということになる。駅名標にも萌黄色の「JR北海道」のロゴが刻まれているし、駅員さんもJR北海道の社員、駅舎内のポスターやらもみな、北海道仕様である。だからなんとなく北海道に来たような気分になってしまうが、実際はまだギリギリ本州の最果て。新幹線は奥津軽いまべつ駅を出て少しすると、青函トンネルに潜って津軽海峡を越えてゆく。
そんな最果ての駅の外に出てみる。駅舎から出るには、改札口から長い通路を渡ってエレベーターの設けられている昇降棟に行く。その通路はガラス張りになっていて、真下には新幹線の保守基地や津軽海峡を渡る貨物列車のための線路が走っている。片隅に置かれている保守車両を見ると、この場所に駅が設けられた理由がほんの少しわかるような気がするところである。