青森方面に戻ることを諦め……ローカル線の旅へ
ならばと新幹線に乗って青森方面まで戻ろうにも、これがまた実に厄介。奥津軽いまべつ発の上り新幹線がいつになってもやって来ないのだ。10時7分の下りで到着した場合、15分後に上り新幹線があるにはあるが、道の駅で時間を潰していたらそれに乗るのは難しい。となると、上下どちらに行こうにも13時台まで列車は来ない(その間、通過列車はバンバン通る)。これでは津軽線に乗り継いだほうがまだマシである。さすが、1日の利用者が100人に満たない新幹線でいちばんの秘境駅……。
かくして津軽半島の秘境駅前で途方に暮れていたら、駅前のロータリーに1台のバスがやってきた。バスと言っても小さなマイクロバスだが、れっきとした路線バスのようだ。聞けば、「津軽鉄道の終点の津軽中里まで行きますよ」。料金は1200円だが道の駅できっぷを買えば半額の600円で済むという(期間限定)。慌てて道の駅に戻ってきっぷを買って、このバスに乗ってみた。
筆者以外に誰も乗っていないマイクロバスは快調に森の中を走って山を越え、1時間もかからずに津軽平野の北の端、小さな集落の中の津軽中里駅に到着した。ここで津軽鉄道に乗り継げば、太宰治の生地にしてあの『俺ら東京さ行ぐだ』の吉幾三の故郷・金木の街を通る。そして終点の五所川原まで行けば日本海の絶景を拝める屈指の観光路線・JR五能線と接続する。ここまで来れば、すっかりローカル線の旅が楽しめる。そうしてみれば、東京から3時間半で行ける新幹線No.1の秘境駅を皮切りに文学の香り漂う最北端の私鉄、そして絶景車窓の旅というのも、悪くない休日の過ごし方になりそうなものである。
(※2019年6月上旬、取材時点の情報です)
写真=鼠入昌史