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「いつまで持つかわからない…」コロナ禍の風俗店で働く女性が吐露した“痛ましい本音”

なぜ彼女たちは涙を流すのか

2020/09/21

genre : ライフ, 社会

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 こうした相談者の女性に対して、相談員は、まず「お辛い状況の中、相談してくださり、ありがとうございます」と、感謝の気持ちを伝えている。

「困った時に相談する」ということは、誰にでもできることではない。悩みが深刻になればなるほど、相談しづらくなる。「自分が悪いから仕方がない」「怒られたらどうしよう」という気持ちを押し殺して、他人に自分の悩みを打ち明けて、助けを求めることは、大きなストレスを伴う。

「誰にも言えなかった」という言葉

 そうしたハードルを乗り越えて相談してくれたことへの感謝を伝えた後、相談者に対して「ずっとお一人で頑張ってこられて、本当に大変でしたね」「お子さんやご家族のために、一生懸命働いてこられたんですね」と、これまでの頑張りを労(ねぎら)う言葉をかける。決して説教や否定をせずに、これまでの選択や行動をジャッジせずに、ただ労いの言葉を重ねる。

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©iStock.com

 すると、彼女たちは、異口同音に「誰にも言えなかった」と言って、涙を流すのだ。これまで押し殺していた気持ちが一気にあふれ出して、嗚咽が止まらなくなる。

 号泣する女性に対して、相談員は「誰にも言えなかったんですね」「そうした中で、よくお一人で頑張ってこられましたね」と、労いの言葉を繰り返す。

 場合によっては、号泣する相談者に対して、相談員が感謝と労いの言葉をかけ続けるだけで相談時間が終わることもある。

「見えない孤立」をやわらげるために

 風俗で働く女性の中には、借金、家族関係、障害や病気、DVなど、複雑に絡み合った課題を抱えている人が少なくない。制限時間があり、顔の見えないLINE通話での相談でできることは、やはり限られている。法律や福祉の無力さを感じる場面も少なくない。

 ただ、どんなに辛い状況に追い込まれていても、泣くことすらできない女性はたくさんいる。泣くことを自分に許していない女性も、たくさんいる。

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 そうした女性たちにとって必要なのは、「安心して泣くことのできる場所」だ。「法律相談」や「問題解決」の前に、風俗で働いていることを隠さずに、そして自分の気持ちに嘘をつかずに話せる場所があれば、彼女たちの「見えない孤立」を、ほんの少しでもやわらげることができるのではないだろうか。

 そんな思いを抱きながら、私たちは、今日も彼女たちの涙を受け止めている。

INFORMATION

「風テラス」では、クラウドファンディング「夜の世界で孤立している女性・1万人に支援を届けるプロジェクト」への支援を募っています。詳しくは下記のURLをご覧ください。
https://readyfor.jp/projects/38162

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