終わりの見えないコロナ禍の中、風俗店で働く女性たちもまた、客足の減少に伴う収入の大幅な低下、店舗の休業・閉店により、非常に苦しい状況に追い込まれている。

 私は「風テラス」という、風俗で働く女性のための無料生活・法律相談窓口を運営している。コロナの影響が深刻化して以降、風テラスには全国の風俗店で働く女性たちからの相談が殺到している。2020年1月から現在までの約9か月間で、実に3700名を超える女性たちの相談を受けている。

絵文字の羅列や記号だけのアカウント名

 コロナの影響で対面相談を行いづらい状況になっているため、風テラスでは、現在LINE通話を使ったオンライン相談を中心に行っている。

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 相談者のLINEのアカウント名は、絵文字の羅列だったり、記号や顔文字だけだったりと、そもそも人名として認識できないものが少なくない。「検索されたくない」「見つかりたくない」という彼女たちの心情を表しているかのようだ。

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 実は、緊急事態宣言の発令された4月以降、相談の最中に泣き出す女性が増えている。相談開始直後から泣きはじめ、そのまま最後までずっと号泣し続ける人もいる。1日に4人の女性(当然、住んでいる地域も年代も全員異なる)から相談を受けた際、示し合わせたかのように、4人全員が相談の途中で泣き出してしまった、ということもあった。コロナ前と比較しても、そうした事態は顕著に増えている。

 なぜ彼女たちは、初めて言葉を交わしたばかりの相談員の前で、涙を流すのか――。

「風俗で働きたい」と語る女性たち

 生きていくために、望まない風俗の仕事をしなければならないことの辛さから、泣くのではないか。そう考える人も多いだろう。

 確かに、風俗は決して楽な仕事ではない。初対面の男性とホテルの密室で一対一になり、裸の状態で過ごさなければいけない。原則として客を選ぶことはできず、お店のルールで決められたサービスの提供を断ることもできない。

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 しかし、「風俗の仕事のおかげで、とても助かっている」「コロナの影響が落ち着いても、このまま今の仕事を続けたい」「生活保護を早く抜けて、風俗で働きたい」と語る女性も少なくない。お店の休業・自粛により働けなくなったことで、逆に鬱状態になってしまった女性もいるのだ。

 一方で、夜の世界で働く女性は、社会の中で孤立している、とも言われている。これは、必ずしも悪質な業者やスカウトによって騙され、搾取された結果、孤立させられている……という意味ではない。生きるために、自分から進んで孤立への道を歩んでいる女性も多いのだ。