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「東京大学総長選」で怪文書が飛び交い、大混乱する日本独特の「筋論」

2020/10/09
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 まだゆるゆると日本学術会議が炎上しております。

 日本学術会議が会員に推薦した6名の学者を総理大臣である菅義偉さんが任命拒否したことで勃発したこの事件、設置法(日本学術会議法)の読み方から憲法上規定される人権や学問の自由を巡る論争になってしまいました。どうしてこうなったのでしょう。

菅義偉さん、日本学術会議に介入して面白がられる一部始終
https://bunshun.jp/articles/-/40666

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菅義偉 ©文藝春秋

「アベロス」現象からの「スガ政治を許さない」で落ち着いた感じに

 巷では、苦労人として報じられて新総理就任直後は支持率7割を誇った菅義偉さんですが、今回の件で地味に強権政治の謗りを受け、もっぱら政権批判をしたがる左派やマスコミからは「ガースー黒光り内閣」とか「スガーリン」などと揶揄されるようになってしまいました。一時期はサンドバッグ状態になっていた安倍晋三さんが総理でなくなってしまったことにより、批判対象を喪失した「アベロス」現象も心配されておりましたが、菅さんも安倍さんと変わらず「スガ政治を許さない」という文脈も踏襲して我が国の政治論壇もかなり落ち着いた感じがいたします。

 もちろん、今回の日本学術会議ネタは面白いわけですが、これ単体で言えば「少なくとも、菅政権は任命拒否までするのであれば『なぜそうなったのか』を説明して欲しい」と政権には言いたくなります。一方で、この案件を政治問題、政権批判にまで膨らませてしまった以上、日本学術会議自体の改革も議論に出てくることでしょう。

 菅さんの天敵でもある東京新聞の望月衣塑子さんも記事にしていますが、過去にも任命拒否の事例があったと報じられたものの「安倍前政権が本当に任命拒否したならそれは問題ですが、なぜそのときは騒がれなかったのでしょうか」という素朴な疑問を抱きます。

日本学術会議にも問題発覚で全体的に超絶緩んでる

©iStock.com

 同様に、日本学術会議は設置法に定められている政府への答申が2007年以降提出されていないという問題も飛び出し、適法ではない(かもしれない)任命拒否をやってのけた菅政権もグダグダだが、政府の諮問機関であるはずの日本学術会議も違法に答申を行ってこなかったという、全体的に超絶緩んでる一部始終が明らかになるわけであります。

 政府全体の学術予算から見ればはした金である年間10億円程度の予算とは言え、日本国民が納めた税金は税金である以上、国民としては「お前ら、もう少し真面目にやれ」としか言いようがありません。

【独自】2018年の補充時も官邸難色示す 学術会議の任命拒否問題:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/60151

日本学術会議の在り方 作業チーム設けて検討へ 自民 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201007/k10012652441000.html

東京大学総長選でも意味不明のすったもんだが

 で、同じく我が国の学校教育の最高峰に位置するはずの東京大学総長選でも、意味不明のすったもんだが広がっていました。

 簡単に言えば、6年の任期である東京大学総長が改選されるにあたり、こっちはこっちで厳重に秘密が守られるはずであった「東京大学総長選考会議」での会話すべての録音とその文字起こしが流出してしまったのです。