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山本 一郎
2017/09/14

「空気を読む」マネジメントより「行間を読む」スキルが求められる時代に

 私が働きだした20年ぐらい前は、全力で働くことが良しとされ、組織の中に団塊オヤジがどっかり腰を下ろしていて、仕事を取るのも円滑に物事を進めるのもノミニケーションが主体であっても何も問題とされていませんでした。飲みに付き合わない奴はノリが悪いと言われ、取引をするにあたって得意先の幹部が企画する宴会に顔を出さないと仕事が他に流れると危惧した時代は確かにありました。

 当時は私もタバコを吸っていたので、緊密な取引先さんに出向いた帰りに喫煙室にいくと大抵そこの会社の幹部さんがタバコを吸っていて、これはこれで貴重な情報交換ということもありました。まあ、何というか相手の懐に入るにはそういう「お作法」を身に付けておくと何かと世の中を渡っていくうえで便利ですよ、という物事があり、しかもそういうことをうまくやる奴が出世していくのが文字通り目に見えて分かるので、必死になって得意先の会社の中の「風読み」をしたものです。

「ダイバーシティ」の世の中で通用しない組織論

 時は下り、いまや監査法人や大学病院ですら労働基準監督署が入って不適切な残業がなかったか立ち入り検査を喰らう時代となりました。経験の深いベテラン社員が幹部になり、社歴の長い人ほど偉く、給料が高いとは限らない時代となってくると、私もいつしか年上の社員を雇い、英語しか話せない技術者を日本に呼んで仕事をするようになりました。そうすると、一挙に「ダイバーシティ」の世の中がやってくるのです。

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 つまり、日本人が阿吽の呼吸で「こんなもんだろう」と思ってきた組織論が通用しない。秋葉原のラボで雇ったインド人は「今度飲みに行こう」といっても気が乗らなければ平気で断ってくるわけですよ。当たり前ですね、上司と部下だし、文化も違えば笑えるツボも異なるんですから。酒の力を借りて部下の本音を、というようなクソの塊みたいなマネジメントがどんどん通用しなくなり、幹部に女性社員が増えると今度は下ネタを職場で言わなくなる。どこそこの会社の何とかさんが辞めさせられたらしいと耳にして事情を聴きに行ってみると、ついうっかり女性社員の前でセクハラめいた発言を繰り返してしまい、問責され吊るし上げられて心を病んでしまったという話を聴いて、時代は変わったのだなと思います。

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