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『ゴッドタン』“ヤバい若手No.1”ゆにばーす・川瀬名人の“尊さ”――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

『ゴッドタン』(テレビ東京)

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レギュラー出演中の劇団ひとり  ©文藝春秋

 よく最近の若手芸人はつまらないと言われる。一方で、若手芸人はみんなレベルが高いとも言われる。どちらにも真実は含まれている。つまり、みんな一定以上のネタの面白さはあるが、飛び抜けるような面白い個性を持った若手があまりいないということだ。

 そんな中、『ゴッドタン』で企画されたのが「アイツにもう一度だけ会ってみよう!」。アイツとは以前「この若手知ってんのか2017」と題された企画で尖っているからと「ヤバい若手No.1」に輝いた芸歴5年目のゆにばーす・川瀬名人だ。『M-1グランプリ』優勝を目標にし、それが果たせたら引退すると言ってはばからない男で、漫才がブレるためバラエティ番組には出たくないと主張する異質な存在。以前番組に出たのもネタ見せがあるからとマネージャーに騙されたのがきっかけだったという。

 現在バラエティ番組に引っ張りだこの三四郎・小宮もこの番組の「この若手知ってんのか」で紹介されてブレイクした。実は川瀬は元々、「小宮さんは天才」と尊敬していた。しかし、バラエティに出て変わってしまったと嘆く。

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「小宮さんは上手にやりました。徐々に角を取っていき、ゴールデンに進出していって、可愛げのあるキャラになっていった。と同時に漫才の面白さが失われていく悲しさ。で、相方の相田さんがオモんないみたいなイジりされて、オモんない奴とイジられる奴の漫才を僕は見たくなかった」

 さらば青春の光の森田は今のテレビ界を「空前のポンコツブーム」だと形容した。いかに“負け様”を見せるかがテレビで使われる鍵になっているのだ。また、同番組でハライチの岩井も多くのバラエティ番組は、「お笑い」ではなく「お笑い風」だと断じている。ポンコツとされている人がイジられ笑われる。そうしたお手軽な笑いがテレビの主流になっているのだと。きっと川瀬もそうした「お笑い風」をやりたくないと思っているのだろう。もちろん、一口にお笑い芸人といっても目指すものは様々だ。テレビで有名になって人気者になりたい人もいれば、笑いを追求する人もいる。その違いに優劣はない。だが、後者がテレビではどんどん活躍しにくくなっているのは紛れもない事実だ。だからそこで意識を変えていくのもいいだろう。けれど川瀬のようにそんな時代に必死に抗う個性も尊い。結果、皮肉にもそれがイジられる要素のひとつとなってしまったとしても。

▼『ゴッドタン』
テレビ東京 土 25:45~26:10

『ゴッドタン』“ヤバい若手No.1”ゆにばーす・川瀬名人の“尊さ”――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

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