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森喜朗に引導を渡したアメリカの“ラスボス”とは?

2021/02/19
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「森氏は去るべき」との記事を掲載したサイトとは…

 だが、IOCの背中を押した最も大きな力は、アメリカのテレビ局3大ネットワークのひとつ、NBCだ。同社は10日、自社サイトに「森氏は去るべき」との記事を掲載した。直接的に辞任を求める厳しい論説に驚くが、最も影響力があったのは、IOCに対する米NBCの立場だ。

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 米NBCは14~32年の夏冬のオリンピック放映権料を120億3000万ドル(約1兆2600億円)で契約。IOCの13~16年の総収入57億ドルのうち、放映権料が41億ドル余り、TOPスポンサー料は10憶ドルだ(拙著『オリンピック・マネー』文春新書)。放映権料のうち、米NBCは20億ドルを負担した。つまり、IOCにとって、米NBCは1社でTOPスポンサーの2倍の資金を提供する最上位中の最上位の存在なのだ。

 米NBCは19年末時点で、東京オリンピックのCM枠を約12億ドル販売済みだ。18年と20年のオリンピックで米NBCが負担する放映権料は23億8000万ドルのため、半分は回収のめどが立ったはずだった。

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 ところが、コロナ禍で大会は延期され、CM契約も持ち越された。さらに延期した1年間に世界中で感染が拡大するばかりで、日本人の大半は通常開催が困難と考え、中止の機運が高まってきた。そんな状況での森氏の女性蔑視発言は、CMスポンサー離れを招き、大会中止リスクを高める。米NBCが森氏辞任を後押しし、IOCが手のひら返しで追従する。商売としてのオリンピックの現実がここにある。