2003年に福岡県福岡市で発生した「福岡一家4人殺人事件」の犯人である魏巍(ギギ=中国読みはウェイウェイ。犯行時23歳。19年12月に死刑が執行)と養子縁組を結び、中国にいる彼の両親から被害者への慰謝料名目で、日本円にして1000万円近くを引き出した疑いのある女性がいる。
会社の電話も携帯電話も通じない
11年に同事件の被害者親族であるAさんから当該の女性・桑原祥子さん(仮名)の行状を聞いた私は、直接本人に問い質そうと考えた。
まずは彼女が「営業部長」の肩書で籍を置く、福岡市の「宙の花」(仮名)という会社に電話をした。しかし、誰も電話には出ない。そこで桑原さんの携帯電話に電話を入れ、留守電に連絡が欲しい旨の伝言を残す。続いて、鈴木教授(仮名)の携帯電話に連絡を入れた。大学教授の彼は、桑原さんと行動をともにしており、Aさん宅にも同行している協力者だ。電話に出た鈴木教授は、私が桑原さんの名前を出すと途端に口調が変わった。
「ああ、あの人には私もひどい目に遭ったんです。もう私は関係ないですから」
そうは言っても、同行するあなたの大学教授という肩書によって、桑原さんが相手の信頼を獲得できていたのではないかと問うと、彼は突き放した。
「いや、知りませんから。私はなにも知りませんから……もう切りますよ」
そして電話は切られ、以降、何度電話をかけ直しても、電話に出ることはなかった。
「小野さんの電話のせいで、いろんな人から怒られたんですよ」
その夜、韓国にいるという桑原さんから電話があった。国際電話であるため、こちらからかけ直す旨を伝え、通話を録音しながら電話をかけた。
「小野さんがいろんな知り合いに電話をかけたことで、いろんな人から怒られたんですよ」
彼女はこちらの取材によって、関係する弁護士や周囲の人物に怒られたと主張する。
「魏巍のことで、小野さんにいろいろ教えてあげようと思っていたんですけど、いろんな人から怒られたので、それもできなくなりました。私の息子とか、前の主人(*実際は離婚はしていない)にも迷惑がかかりました」
しかしAさんから、桑原さんが魏の両親から1000万円近くを預かったとの話を聞いていると私が告げると、彼女はとぼけた。
「(1000万円とか)一度もそういう話をしたことはありません。魏巍のお父さんから受け取ったこともありません。鈴木先生と中国の弁護士が動いていることは話したかもしれないですが、私はそういう記憶はないですから」