科学捜査の発達した現代では、警察の事件捜査能力は飛躍的に向上した。警察庁の「犯罪統計資料」の中の殺人事件の件数をみれば、2007年から2016年の10年間の認知件数1万567件に対し、検挙数は1万288件と約97%だ。
逆にいえば、今日でも尚、3%ほどの事件が「未解決」になっている。殺人など凶悪犯罪の時効が廃止されて早11年。事件の風化を防ぐため、実際の現場を新たに訪れ再検証を行ったロングセラー「迷宮探訪」(警視庁元刑事・北芝健監修、「週刊大衆」編集部編、谷口雅彦撮影:双葉社2017年刊)より、一部を抜粋して引用する。
今回は2009年、島根県浜田市・広島県北広島町で起きた「島根女子大生バラバラ殺人事件」について――。
◆◆◆
「島根女子大生バラバラ殺人事件」事件概要
2009年10月26日に行方不明となった女子大生が、同年11月6日にバラバラ遺体となって発見された事件。被害者は島根県浜田市に住む島根県立大学1年のHさん(19=当時)。Hさんは10月26日21時15分頃に浜田市内のショッピングセンターでのアルバイトを終えて、帰宅する途中に消息を絶った。その夜に自宅へ帰った形跡もなく、携帯電話もつながらなかったため、28日に香川県にいる家族によって捜索願が出され、捜索が行われた。
そして11月6日の13時45分頃、島根と広島の県境付近、広島県北広島町にある臥龍山でキノコ狩りをしていた男性が、山頂付近の斜面で若い女性の頭部を発見。後日、周辺で胴体、大腿骨なども続けて発見された。後の警察の鑑定により、これらはHさんの遺体であると断定された。
遺体の損壊が激しかったことなどから、警察は怨恨による殺人事件の線で捜査を行うも、解決には至らず、事件は迷宮入りが濃厚ともいわれたが、遺体発見から7年後の2016年12月、警察は、島根県益田市に住んでいた男(33=当時)を犯人と特定。その男は、遺体が発見された2日後に交通事故で死亡していたため、被疑者死亡のまま書類送検。2017年1月に不起訴処分となった。
◆
なぜ事件が起きたのか、なぜ被害者は…
我々が『増刊大衆』の取材で、この事件の現場を訪れたのは2015年の5月のこと。何の手がかりもないといわれたこの事件が、その1年半後に急転直下の解決を見ることになるとは、そのときは思ってもみなかった。だが、そこに待ち受けていたのは被疑者死亡という無念の結末だった。なぜ事件が起きたのか、そして被害者は、なぜ殺されなければならなかったのか――その謎を解くことは、永遠にできなくなってしまった。警察が解明した「謎」と、残された「謎」。現地取材を振り返りながら、これらを今一度、検証したい。
◆