「いやです、やめてください…」「静かにしろと言ったろ。殺すぞ!」
レイプ事件の現場は、なんと特急列車…。なぜ公共の場ともいえる列車のなかで凶行がまかり通ったのか? 2006年に起きた事件の顛末を、前後編に分けてお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/後編を読む)
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21歳女性に近づいてきた「野蛮な男」
前代未聞の事件の被害者となるA子さん(当時21)は北陸地方の実家に帰省し、一人暮らししている関西圏に戻るところで被害に遭った。
特急列車の窓側の席に座り、しばらくは1人で過ごしていたが、途中の駅から隣の通路側の席に座ってきたのが植田光夫(36)だった。
一見してチンピラ風の植田に嫌悪感を抱いたが、仕方ない。最終便のためか、車内はかなり混雑していた。A子さんはどこにも逃げようがなく、植田の隣に座り続けるしかなかった。
「姉ちゃん、一緒に酒を飲まないか?」
A子さんは植田に酒を勧められたが、断った。他にもいろいろと話しかけられたが、困惑して生返事をしていた。
「何だよ、愛想の悪い姉ちゃんだなァ…」
しばらくして、植田の携帯が鳴った。だが、植田はデッキにも移動せず、その場で大声でしゃべり始めたので、A子さんが耳をふさいだところ、その態度が癇に障ったのか、「うるさいんやったら、耳栓をせいや。殺してしまうぞ、コラ!」と怒鳴ってきた。
「殺すぞ!」
態度の急変に驚いたA子さんが身を縮こまらせると、逆に植田の態度はますますでかくなり、「目的地に着くまでこうさせてくれよ」と言って、A子さんの肩に腕を回してきた。
「やめてください…」
「いいじゃんかよぉ…」
さらに服の中に手を入れて、乳房を揉み始めた。ズボン越しとはいえ、陰部にも触ってくる。植田のセクハラ行為はエスカレートするばかりだった。
「分かってると思うが、大声を出すなよ。殺すぞ。抵抗したら、ストーカーのようにどこまでもお前を追いかけるからな!」
植田のセクハラ行為は約1時間も続き、その間に他の客がチラチラと見ると、「てめえ、何を見とるんじゃ!」などと恫喝していた。
A子さんは助けを求めることもできず、ただ泣くしかなかった。
さらに植田はA子さんを強姦しようと決意し、手を引っ張って電車内の男子トイレに連れて行った。
「いやです、やめてください…」