「オレはやっていない。その日は塾で授業をしていた。精液が一致したなんて、捜査機関のデッチあげだ!」

 DNA鑑定によって、「被害者の女子高生から検出されたDNA」と「犯人男のDNA」が一致した強姦事件。明確な証拠があったにもかかわらず、裁判が長期化した理由とは…? 2006年に起きた事件の顛末を、ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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強姦男のその後

 女子高生を脅して連行し、2度も強姦した犯人が、たった10分で犯行を終えることができたのだろうか。それも仕事の直前に犯行に及び、そんな慌しいマネをしなければならなかった理由は何か。藤川が日頃から、稀に見る評判のいい講師だったことも、情状面でプラスに働いた。

 公判が始まると、検察側は「一度は取り調べ段階で自供した」と主張したが、調書自体の任意性が争われることとなり、藤川は「捜査員に胸ぐらをつかまれて怒鳴られ、『認めれば出してやる』と言われ、仕方なく調書にサインした」という主張を展開した。

 検察側は事件の1年4カ月後に「被害者のスカートからも精液が検出された」という“新証拠”も提出したが、それはクリーニング済みのもので、弁護側は「そんなものから検出されるはずがない」と否認した。

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 取り調べた警察官、被害者、学習塾関係者、DNA鑑定を行った専門家、あらゆる関係者が法廷に呼ばれ、2年後に裁判所が下した判決は懲役4年の実刑。「捜査機関による捏造の可能性」を否定した上で、犯行を次のように認定した。