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未解決事件を追う

小柄な体格ながら、気丈で活発な学生だった被害者

 被害に遭ったHさんは当時19歳の島根県立大学1年生。2009年4月から地元の香川県を離れて、島根県浜田市内にある同大学の女子寮で一人暮らしをしていた。身長147cmと小柄な体格ながら、気丈で活発な学生として好評判だったという。高校時代の部活は応援部。英語実務科というコースに在籍し、アメリカでのホームステイを経験していた彼女の将来の夢は、英語を生かした仕事に就くことだった。大学でも国際的なボランティアのサークルに所属し、精力的に活動していたそうだ。

被害者のHさんが通っていた島根県立大学 ©谷口雅彦

 そんなHさんに異変が起きたのは、2009年10月26日の夜。浜田市のショッピングセンター内にあるアイスクリーム店でのアルバイト終了後に、行方が分からなくなった。ショッピングセンターの監視カメラに彼女の姿が映っていたことや、帰宅した形跡がなかったことから、帰り道で事件に巻き込まれたものと見られている。同月28日に家族から捜索願が出されて警察も動いたが、捜索は難航した。それもそのはず、彼女が発見されたのは、浜田市街から約25kmも離れた広島県の山奥だったのだから……。

 11月6日13時45分頃、広島県北広島町の臥龍山山頂付近で若い女性の頭部が発見され、後の鑑定で、それがHさんのものと断定された。発見したのは、キノコ狩りに来ていた男性だった。

遺体発見現場へと続く林道 ©谷口雅彦

 発見された頭部に腐乱はなく、顔面に皮下出血の痕があった。また、首には紐で絞められた痕があり、引っかき傷も残っていたという。また、その翌日から同月9日までに、大腿骨、胴体、左足首が次々と発見され、19日には動物の糞の中から足の爪も発見された。大腿骨は肉がそぎ落とされており、胴体は腹部から内臓が抜き取られ、性別が分からないほどに切り刻まれたうえで、火をつけられた痕もあったという。

 ちなみに、現場に血痕は残されていなかった。そのことから、どこか別の場所で殺害、解体された可能性が高いと見られていた。

緑鮮やかな穴場の観光地に……

――東京から島根県の浜田に入るには、広島から中国山地を抜けるのが最短ルートだ。そこで我々は広島から北上し、島根との県境にある遺体発見現場の臥龍山を経由して浜田へと向かうことにした。

写真の右側に写っているのが臥龍山。麓には田園風景が広がる ©谷口雅彦

 瀬戸内海側から高速道路を北上してしばらく行くと、島根県との県境付近に差しかかる。遺体が遺棄されていた臥龍山のあるのはこの辺りだが、なだらかな尾根が延々と連なるばかりで、道中には人家もまばら。これでは、どれが臥龍山なのか判別することは難しい。