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「まだ早い」麻生副総理は河野太郎に忠告 水面下で広がる“ポスト菅”の動きを後藤謙次氏が徹底解説

「まだ早い」麻生副総理は河野太郎に忠告 水面下で広がる“ポスト菅”の動きを後藤謙次氏が徹底解説

後藤謙次「政局」インタビュー #1

2021/05/09
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ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性

 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。

河野太郎 ©文藝春秋

 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。

 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。

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 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。

安倍晋三前首相 ©文藝春秋

安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証

 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。

 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。