「文大統領離れ」を分析した報告書の中身
李知事へ風が吹いたのは4月7日に行われたソウル・釜山市長補欠選挙だ。この選挙で両市長は野党候補が当選し、与党「共に民主党」は惨敗。
与党(ソウル支部)が選挙の敗因を調査した「ソウル市の有権者対象フォーカスグループインタビュー報告書」(2021年5月3日)を見ると、与党離れの原因は2019年秋に起きた「曺国(元法相)騒ぎ」、不動産政策の失敗と韓国土地住宅公社(LH)の不正投資、検察改革での変質、故朴元淳前ソウル市長によるセクハラ問題などがあげられている。
文在寅大統領の支持率もこれらの事件と同時に変動していて、徐々に文大統領離れ、「共に民主党」離れが加速していっている。
大きく開きがあった党別の支持率も今は野党第一党の保守派「国民の力」と拮抗しており(「共に民主党」28%VS「国民の力」27%、韓国ギャラップ)、このままいけば次期大統領選挙も負けるのではないかという危機感の現れが李知事への与党内での支持につながったとみられている。
「マンションを持つことは罪なのか」と言い放って喝采
与党「共に民主党」を長く取材していた中道系紙記者は、李知事の次期大統領としての勝算の高さを3つ挙げた。
「ひとつは上昇し続けてきた支持率。2017年の予備選挙前は3%ほどだったのをここまで引き上げた。そして、城南市長、京畿道知事として着実に成果を上げてきた認知度。3つめは、保守にも通じるポピュリズムがあげられます」
知事としての公約の達成率は90%にのぼるといわれ、最近だとコロナ対策でいち早く「災難支援金」に言及し実行して耳目を集めた。
保守にも通じるポピュリズムにはこんな発言がある。2016年、雑誌のインタビュー(時事ジャーナル)で李知事を社会主義者だとする向きもあるがと訊かれてこう答えている。「私は保守主義者ですよ。私が思い描く社会は原則が尊重され、蒔いたぶんだけ刈り取れる、寄与したぶんだけ受け取れる社会。約束したことを守るのが保守です。機会が公平でなければならないわけで、結果を等分に分けようというのではありません」。
現政権の不動産政策で不動産所有者が”敵”と見なされていることへ、「(価格の高い)マンションを保有することは罪なのか」と言い放って保守派から喝采を浴びた。
前出した「報告書」では李知事を支持する理由として「主観がブレないイメージがある」や「過激な方法でも本人がやると決めたことはやるという強いイメージ。非難を浴びても屈しないイメージがあり今の韓国に必要なのではないか」というものもあった。
報告書では李知事人気は「親文陣営や今までの親民主党勢力と差別化できる適任者とされている」などとまとめている。ただ、20~30代の女性にはアンチ李在明が多く、「(李知事が)大統領になると怖いと思うし、あまりにもポピュリズム傾向が強い」「恐怖心を植えつける、なんとなく社会主義的な印象がある」という声が上がっていた。