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「脳みそから気持ちの良い汁が出てきますから」光浦靖子が全ての人に“手芸”をオススメする理由

『50歳になりまして』より#2

2021/05/30

source : ライフスタイル出版

genre : エンタメ, 読書, 芸能, アート

note

一度も飽きたことのない手芸

 小学校3年生のクラブの時間で手芸に出会ってから、ずっと好きです。飽きたことが一度もありません。子供の頃から「婦人百科」「おしゃれ工房」「すてきにハンドメイド」など手芸番組が大好きでした。モノが作られてゆくのを見るのが大好きです。手提げ袋でも服でも、普通は布と同じ色の糸を使い、縫い目をわからなくするのですが、作り方の説明で「わかりやすく赤色にしております」と、わざと縫い目がわかるように、赤色の糸で縫うことがあるんです。それがたまらなく好きでした。「イーーーーーッ!!!」となるんです。わからないですよね、その感覚。美味しいブリの照り焼きを食べた時、旨味成分が口いっぱいに広がって、ほっぺが内側にキュウウと縮んでくる感じと、息を吐くことを忘れて吸って、吸って、吸い続けて、その空気で体がちょっと浮く感じと、おしっこが漏れそうな感じの間……わかりませんか?

 普段、白い糸で縫うところが赤い糸で縫われているんですよ。特に手縫いがたまりません。プロがテレビ用に縫うわけですよ。それは一目、一目、本当に均等で。でも機械のような均等さじゃなく、どこか丸みを帯びてて、イーーーーーーーッ!!! 

フォーリンラブ・バービーさんのブローチ

 文房具屋さんでもよくなりました。サンリオの可愛いものも大好きでしたがそれではなく、普通の鉛筆が5Hから5Bまで並んでたりするとイーーーーーッ!!! となりました。飾り気のないもので種類があると興奮しました。画用紙のサイズ違いが並んでいるのを見てイーーーーー!!!となります。梱包素材の卸の店もイーーーッ!!!となりますね。だって、様々な大きさの業務用ビニール袋や、業務用紙袋が溢れているんですもん。そう、紙袋も大好きで、捨てられません。私のフェイバリット紙袋は、駄菓子屋でカレーせんべいを入れてくれる、口がギザギザに切られてる、縦筋のある、ただの白い紙袋です。筋ナシも好きですが、筋アリがたまりません。あの、油紙みたいな質感の筋がたまらないですよね。油紙、あの透けてる感じの紙を見るとイーーーーーーッ!!!となります。あの油紙的な紙質の封筒あるじゃないですか。耐久性のなさそうな、ペラペラの茶色の封筒。あれもたまらないですね。封筒といえば、全然可愛くない白い封筒の内側にある、紫色のひとまわり小さい封筒とか、イーーーーーッ!!! となりません? 

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 これをフェチと呼ぶんでしょうね。

50歳になりまして

光浦 靖子

文藝春秋

2021年5月29日 発売

私が作って私がときめく自家発電ブローチ集

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「脳みそから気持ちの良い汁が出てきますから」光浦靖子が全ての人に“手芸”をオススメする理由

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