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売れる「就活本」で大学生の進路希望がわかる? 東大・京大は研究者、早稲田はメディア、慶應はプレゼン

2021/06/29
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就活人気ベスト10企業を見ると

 たとえば、ワンキャリアが2021年3月1日に発表した「東大京大22卒就活人気ランキング」(https://www.onecareer.jp/articles/2573)では、1位・三井物産、2位・野村総合研究所、3位・アビームコンサルティング、4位・KPMGコンサルティング 6位・三菱商事 9位・アクセンチュア 10位・ボストンコンサルティンググループというのが東大京大の学生が選んだ上位の人気企業だ。ベストテン以降も総合商社、コンサルティング会社が並ぶ。

京都大学 公式サイトより

 大学生協の売れ行きも、それを反映したものになる。『現役東大生が書いた地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』のランクインは象徴的だろう。

 フェルミ推定とは、簡単に言うと「日本に蛍光灯は何本ある?」などを推定するもので、単に数が合っているかどうかではなく、未知の問題を思考する型や考える体力などが試される。外資系コンサルティング会社などでよく問われることで知られている。仮にこのような質問がでなくても、問題の本質を考えることにつながるスキルである。『独学大全』など、継続的に学び続けるための本のランクインも目を引く。

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『現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』
『独学大全』

「発想法」「プレゼン術」が目を引く慶應

 慶應義塾大学でも傾向は似ているが、とりわけ"社会に出てからも使えるスキル"に関する本が売れるのが慶應の特徴だ。「地頭力」や「発想法」、「プレゼン術」などのキーワードが目立つ。就職してからどう仕事で成果を出すか、さらにステップアップして転職するために、という世界観が見てとれる。

 早稲田大学では、同大学が強いと言われているメディア関連の対策本が売れていることが目を引く。業界の人気も大学によって異なるのだろう。

早稲田大学 ⒸiStock.com

 もうひとつの意外な特徴は、上位大の学生でも「買わざるを得ない本」は存在するということだ。早稲田や慶應は受験で数学を使わない生徒も多いのでSPI対策本が売れるのはわからないではない。しかし京大の生協職員によれば、この月にはランクインしていないもののナツメ社のSPI対策本『史上最強SPI』シリーズは京大でも絶大な支持を受けているという。全大学での売り上げでは、36%をSPI対策本が占めている。

『史上最強SPI』

 東洋経済新報社の『業界地図』を筆頭とする業界研究本も「買わざるを得ない本」に含まれるだろう。『業界地図』は、東大、早稲田、慶應でランクインしている。