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「データが消されたら証拠は残らないの?」警察も頼る“デジタル解析のプロ”に聞いた「復元のワザ」《相場は50万円以上》

2021/08/06
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早速プロに聞いてみた

 話を伺ったのは、データのバックアップ事業やデータ復旧の業務を行う「AOSデータ」のリーガルデータ事業部・副事業部長の小瀬聡幸さん。パソコンなどのデータ復旧サービスを20年以上手掛けている企業で、大手パソコンメーカーと提携してサービスの提供も行っている。また、一般の人向けのデータ復元ソフトやデータ抹消ソフトも販売しているので、大手家電店で、AOSデータの箱入りのソフトのパッケージを目にしたことがある人も多いのではないだろうか。

「その中の事業のひとつとして、『リーガルデータ事業』というデジタルフォレンジックの事業を展開しています。警察や捜査機関からの依頼を受けて、デジタルデータの調査、解析を行っています」(小瀬さん。以下同)

 他にも弁護士事務所からのスマホやパソコンのデータ復元の依頼や、自動車保険会社からドライブレコーダーの解析依頼など領域は多岐に渡る。

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「AOSデータ」での復元作業風景。連日、デジタルデータの調査・解析依頼が寄せられるという(AOSデータ提供)

データが削除されたら証拠は残らないの?

 最初に疑問に思ったことは、証拠のデジタルデータを、どのように見つけ出すのかという点である。パソコンやスマホからデータを削除してしまえば、証拠は残らないはず。消されたデータや過去のデータを復元することは、事実上、不可能ではないのか。

「データを削除しても、視覚的に見えているものが消えただけであって、データが完全に削除されたわけではないんです。管理情報は『このデータは削除したもの』として扱っていますが、物理的なデータは記憶媒体の中に一部残っているので、専用のソフトやツールを使えば、データを復元させることは可能なんです」

 デジタルデータは削除した直後であれば、比較的、復元させやすいという。残った物理的なデータが新しいデータに上書きされないため、データを復元できる確率が高くなるからである。

「復元」から「何がいつ削除されたのか」へ

 では、消し立てほやほやのパソコンやスマホのデータであれば、全てを完全に復元させることができるのか。

「実は最新のスマホやパソコンのデータは、復元がかなり難しくなっているんです」

 小瀬さん曰く、ハードディスクにデータを読み書きするHDDのパソコンは比較的データを復元しやすいが、メモリーチップ型のSSDのパソコンは、処理速度を向上させるために削除したデータをすぐに消滅させてしまうため、データの復元は難しいという。