昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「データが消されたら証拠は残らないの?」警察も頼る“デジタル解析のプロ”に聞いた「復元のワザ」《相場は50万円以上》

2021/08/06

 コロナ禍になってからというもの、仕事はメールやチャット、オンライン会議が主流、プライベートはLINEやSNSでコミュニケーションが完結してしまう世の中になった。誰とも会わずに1日が終わり、他人が何をやっているのか分からない日々が続いている。

 すると、あるときふと気づくことがある。自分自身の“アリバイ”を証明することが、コロナ禍前よりも難しくなったのだ。リモートワークで残業していても、目撃者がいないので、本当に深夜まで働いていたかどうかを証明する術がない。パートナーに浮気を疑われても、「あいつは俺と一緒にいたよ」と証言してくれる相手がいない。ちょっとした瞬間に意外に困ってしまった人もいるのではないだろうか。

 直接的な目撃証言が減ってしまった今、事実を証明できるのはデジタルデータしかない。メールやチャット、LINEやSNSなどの記録が、コロナ禍で自分の行動や発言を唯一証明できる証拠となる。

簡単に手を加えられるデジタルデータ。プロに「復元のワザ」を聞いた。©iStock.com 

近年、重要性が増すデジタルデータの調査・解析

 しかし、デジタルデータは、簡単に改ざんできてしまう弱点を持つ。削除ボタンをクリックするだけで証拠のメールは全て消えてしまう。SNSの文面も素人でも簡単に加工することができる。デジタルデータが確実な証拠となる一方、無関係な人までも事件に巻き込んでしまう可能性も出てきてしまう。

 そのような不安定なデジタルデータを調査・解析するのが「デジタルフォレンジック」という技術である。“フォレンジック”とは、「法廷の」や「法的に有効な」という意味で、パソコンやスマホの記録媒体に残されたデジタルデータを、法的な裏付けを持って調査、提供する業務のことを言う。訴訟案件が多く、証拠の重要性が高いアメリカでは、すでに主流になっている。コロナ禍でオンライン化が進みはじめたことで、日本でも活用事例が増え始めている。

 最近では、今年ソフトバンクの元社員が、社外秘の情報を転職先の楽天モバイルに漏洩した疑いで逮捕されたサイバー事件が記憶に新しい。このような事件は証拠がすべてデジタルデータになってしまうため、デジタルフォレンジックの専門家でなければ事件を解決することが難しくなってしまう。他にも、メールやSNSを使った振り込み詐欺、わいせつ動画のデータのやり取りなど、多くのサイバー犯罪の解明に技術が活用されている。

 今回、デジタルデータがどのように証拠として扱われて、どのようなシーンで活用されているのか、専門家の話を交えながら、デジタルフォレンジックの最新事情をレポートしたい。