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「感染した男性も家族がいたら証言できない」 あのススキノ“おっぱいクラスター”はなぜ起こったのか?《コロナ禍のススキノはいま》

日本色街彷徨 札幌・ススキノ#1

2021/09/04
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人通りもまばら…風俗ビルの看板には空白が目立つ

 ススキノ入り口の交差点にある有名なニッカの看板下は、以前訪ねた時には、多くの人でごった返していたが、信号待ちの人はまばらで、居酒屋の客引きばかりで、「お店、決まっていますか?」と、懸命に声を掛けてくる。

 そして、何より変化を感じたのは、ここは中国かと思うぐらいにいた中国人の観光客がいなくなったことだ。

 昨年訪ねた時には、そこかしこから中国語が聞こえてきたものだった。どこからも中国語は聞こえてこなかった。

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コロナ後の狸小路は閑散としていた ©八木澤高明

 ススキノを歩いてみれば、やはり人通りもまばらで風俗ビルの看板には、空白が目立ち、多くの店がこのコロナ禍で影響を受けているのがわかった。

 ススキノの風俗店やキャバクラなどに厳しい状況が続けば、それらの店と繋がりのあるビジネスにももちろん影響がでる。一例をあげれば、おしぼりを納入する業者や花屋などである。

「ススキノの花屋」はコロナ禍をどう凌いでいるのか?

 私がまず話を聞いたのは、20年ほど前からススキノで花屋を経営している男性だった。店の場所はススキノの入り口ともいうべき場所にある。

「ススキノで一から関係を築いてやってきたんですけど、今回のコロナは今までで一番厳しいですね」

――主な取引先は、やはり水商売になるんですか?

「そうですね。ホストクラブやキャバクラが主なんですが、一番苦しかったのは、昨年の4月でしたね。ほとんどの店が休業してしまったので、売り上げがいい時の5分の1になってしまいました」

――どのように凌いだんですか?

「雇っていたアルバイトの方に辞めてもらって、正社員の方にも昨年の4月から10月ぐらいまでは月に10万円のお給料を出すのが精一杯でした」

ススキノで20年営業しているという花屋の店頭 ©八木澤高明

 さらに経営者の男性によれば、コロナ以前から販路を一般の店に広げていたことも、窮地を耐えている理由のひとつだという。

「ススキノのお店の中には、緊急事態宣言が出ている中でも営業を続けている店もあります。闇営業ですよね。そうした店が注文してくれたり…というのはありました。それに加えて、札幌近郊での葬儀だとか、オープンする飲食店さんと取引させてもらったので、今も低空飛行を続けていますが、何とかなっています。やはりススキノのニュークラブで女の子の誕生日があれば、30万円から40万円の売り上げがあるんですが、一般のお店だと売上はそれの3分の1ぐらいで、しかもガソリン代と時間がかかるので、利益は少ないですよね」

 オリンピックを経て、新型コロナウイルスの感染は終わりが見えないが、男性は早く終息して欲しいと願っている。

「うちの店では一番大事なのは、年末なんですよね。それまでに何とか収まってもらいたいですね」

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